読書が大好きな主婦の読書記録です☆
年間100作品読破を目指して日々読書に明け暮れ、本を通して感じた事や感動を忘れたくないので、記録として綴っています(*^。^*)
近藤史恵 『インフルエンス』

*あらすじ*

大阪郊外の巨大団地で育った小学生の友梨(ゆり)はある時、かつての親友・里子(さとこ)が無邪気に語っていた言葉の意味に気付き、衝撃を受ける。胸に重いものを抱えたまま中学生になった友梨。憧れの存在だった真帆(まほ)と友達になれて喜んだのも束の間、暴漢に襲われそうになった真帆を助けようとして男をナイフで刺してしまう。だが、翌日、警察に逮捕されたのは何故か里子だった――
幼い頃のわずかな違和感が、次第に人生を侵食し、かたちを決めていく。深い孤独に陥らざるをえなかった女性が、二十年後に決断したこととは何だったのか?

 

 

*感想*

同じ団地で育ったという運命から、お互いを守りあう為に犯罪に手を染めてゆく女性3人の物語でした。

 

物語の序盤は、自宅が近いという理由だけで友達関係になれた小学生時代、そして見た目の垢抜け度や性格の派手さでグループ分けがされてゆく中学生時代という、残酷でリアルないわゆる「スクールカースト」も上手く盛り込まれていてグイグイ話に引き込まれました。

 

そのスクールカーストで考えれば、友人関係になることのなかったであろう友梨と里子なのに、14歳の時に友梨は親友の真帆を痴漢から守るために殺人を犯し友梨は逃亡、しかし警察に逮捕されたのは、その場にいなかった里子だったというところから、3人の切れない運命の糸が絡まり始め、胸を苦しめながら読み進めました。

 

特に30歳を越えてからの、友梨が真帆を助けるために行う殺人は、中高生時代の殺人とは違い、その罪の大きさや、その後の影響とかもわかっているだろうに決断するしかなくて、「借りはつくるものではないな…」とか「タダより高いものはない…」などと思いながら読みました。

こういう「逃れられない運命」、もしくはタイトルの和訳を使用するならば「影響。感化。勢力。威信」という物語だからこそ、もっともっと深い心情描写を読みたかったな〜〜(>_<) 262ページでは少なすぎてちょっと勿体無かったです。もっとそれぞれが殺人という切り札を使うしかなかった苦悩を読ませて欲しかったな。

 

何にしても、やはり近藤史恵さんの作品は面白い!ちょっと終盤物語がドライに感じた箇所もあったけれど(友梨と夏目の関係があっさり終わるところ)、文章が簡潔で美しいのでサラサラと読んでしまいました!

登場人物たちのドロドロ濃い運命を描いた長編群像劇を読むには時間が足りない方には、丁度良い長さと濃さの物語だと思うので、是非読んでみてくださいね〜〜♪

 



  ├ 近藤史恵 -
近藤史恵 『わたしの本の空白は』

 

 

*あらすじ*

気づいたら病院のベッドに横たわっていたわたし・三笠南。目は覚めたけれど、自分の名前も年齢も、家族のこともわからない。現実の生活環境にも、夫だという人にも違和感が拭えないまま、毎日が過ぎていく。何のために嘘をつかれているの?過去に絶望がないことだけを祈るなか、胸が痛くなるほどに好きだと思える人と出会う…。何も思い出せないのに、自分の心だけは真実だった。

 

 

*感想*

人間は忘却の生き物だからこそ、長い人生を生きていけるのだと思う。恥ずかしい失敗、腹が立つトラブル、悔しい結果など、全てを鮮明に覚えていたら身が持たないですからね(^_^;)

そして本書を読んだら、その「忘れたい過去」の中には「好きになるべき相手ではなかった人との恋愛」も入るのかも… と思いました。

 

本書の主人公は記憶喪失になってしまった三笠南という女性です。病院で目覚め、「夫」だと名乗る男性がやってきてもいまいちピンとこなくて、「好きという感情の記憶」すらも喪失してしまったのかと思っていたのに、夢に出てくる一人の美しい男性に心惹かれ、そして胸が締め付けられるように痛み、触れたい衝動に駆られてしまう… 

一体彼は誰なのか?実在する人なのか?一体なぜ南の記憶は無くなり、そして記憶は戻るのか?

という、南の苦悩を描いた物語でした。

 

↓ここからネタバレ↓

↓ここからネタバレ↓

↓ここからネタバレ↓

 

 

南と慎也の関係などに色々違和感があったのですが、結論は言われてみれば結構簡単というか、「ほほー!なるほど!」という納得できるものでスッキリしました。

その結論とは…

南は本当は慎也の弟である晴哉と交際していたのだが、南は晴哉に結婚詐欺行為をされてしまい、お金を奪われ、そして南が戸籍上入籍したのは晴哉とではなくて、慎也とだった(晴哉が自分のことを”慎也“だと名乗っていた)。

からだったのですね〜〜

 

このあらすじだけ読むと、ただの結婚詐欺物語なのですが、記憶のない南が晴哉に会いたくて胸を痛めたり、晴哉が深夜に南に会いに家の前まで来て、南がコートを羽織って飛び出すシーンなどが、とてもロマンティックで、気が付いたら没頭して読んでいました。

これが純粋に「好き」ってことなのですよね。

記憶がない分、南が晴哉に恋しているのは、晴哉の美しい外見もあるかもしれないけれど、地位や財力や性格すらも関係ないDNAレベルで惹かれてるということなのかと感じたのです。

しかしその後、徐々に南は記憶を取り戻し、そして晴哉は「好きになるべきではない相手」と認識し、距離を置くことを決めるのですよね…

その「純粋な恋愛」と「大人の分別のある恋愛」という振り幅に切なくなりました(´;ω;`)ウゥ…

 

幸せになるためには条件を選ばなければならない。

 

そんな大人の恋愛小説でした。

切なかったけれど面白かったー!でも本物の慎也が可哀想だったよ〜(´;ω;`)ウゥゥ

 



  ├ 近藤史恵 -
近藤史恵 『昨日の海は』

*あらすじ*

いつも通りの夏のはずだった。その事件のことを知るまでは……
海辺の小さな町で暮らす高校生・光介。夏休みに入ったある日、母の姉・芹とその娘の双葉がしばらく一緒に暮らすことになった。光介は芹から、心中と聞かされていた祖父母の死が、実は「どちらかがどちらかを殺した」無理心中事件であり、ここで生きていくために事実をはっきりさせたい、という決意を聞かされる。カメラマンであった祖父とそのモデルも務めていた祖母。二人の間にいったい何が起こったのか。
残された写真が語るもの、関係者たちの歪んだ記憶、小さな嘘……。そして真相を追う光介が辿り着いた、衝撃的な事実とは……
『サクリファイス』『タルト・タタンの夢』などで話題の著者が、海辺の町を舞台に、青年のひと夏の冒険と成長を描く、切なくてさわやかな青春ミステリー。

 

*感想*

四国の田舎町に住む男子高校生が、祖父母の死の真相を調べることにより、大人になるということを経験・成長していく物語でしたラッキー

 

祖父母が何十年も前に心中、もしくは無理心中したというエピソードは衝撃的ですが、現在の主人公である光介自身の生活は平凡で、町にも刺激的なものはないという設定のため、本書を楽しめるかどうか最初は不安だったのですが… なんと読んでみたら面白かったです!!いや、「面白い!」というよりかは「読ませてくれました!」と言った方がしっくりくるかな。まさしく著者の代表作である『サクリファイス』の時みたいに、自転車ロードレースに興味がないのに、読んでみたらハマってしまった時と同じ感じです桜

 

メインストーリーは祖父母の心中の真相を突き止めることなので、ラストでその真実を知った時は少々驚きました。しかし本書の真髄は、そのラストへ話を持っていくまでの光介の心の成長、つまり「大人になるということ。」「大人が子どもに嘘をつくとき。」「子どもが大人に嘘をつくとき。」「知らない振りをするという自己防衛と優しさ。」を見事に描いていたところだと思いました。東京への日帰り一人旅だけでなく、祖父・葉・絵里香たちのやりたい事をこの町にいながらも追い続ける姿勢に気付けたことも、とても光介には大きな収穫だったことでしょうねぴかぴかぴかぴか

あ、でもそんな風にちょっと成長した光介が、物語後半に8歳の双葉に「甘いものを食べさせたら機嫌が直るなんて思わないで」とピシャっとやり込められるところは、さすがに女の扱いまではすぐには成長しないか(笑)と笑わせてもらいましたイヒヒ

 

心中の真相を突き止めるというミステリー要素だけでなく、少年の心の成長物語としてとても良い作品だったので、本書は是非光介と同年代の子たちから大人まで、幅広い世代に読んでもらいたい物語だと思いましたラブ 是非夏休みにでも読んでみて下さいね〜〜ぴかぴかぴかぴかわーい

 

 

 

 



  ├ 近藤史恵 -
近藤史恵 『私の命はあなたの命より軽い』


*あらすじ*
「どうして人の命の重さには違いがあるの?」東京で初めての出産をまぢかに控えた遼子。夫の克哉が、突如ドバイへ赴任することになったため、遼子は大阪の実家に戻り、出産をすることに。実家に帰ると、両親と妹・美和の間に、会話がないことに気がつく。そして父は新築したばかりの自宅を売却しようとしていた。実家で何があった?明らかになっていく家族を襲った出来事とは―。

*感想*
どっぷりと近藤史恵ワールドにハマってしまい、一晩で読み切ってしまいました桜

まずタイトルが衝撃的ですよね唖然『私の命はあなたの命より軽い』なんて、SMAPの『世界に一つだけの花』を知っている&歌ったことがある人には絶対に言えない言葉だし、そうでなくても一般的な常識や良識があれば言える言葉じゃないでしょう…。だからこそ本書の真意が気になり、本書を読むことにしてみましたぴかぴか(元から近藤史恵作品が好きですしねムード

しかしいざ読み始めてみると、タイトルの真意はさて置き、里帰り出産をしようと実家に戻った主人公が、どうも実家で歓迎されていない空気に触れたり、中学の同級生に喫茶店でばったり再会したのに明らかに無視されたりと、主人公の身に覚えがない冷遇を受け、なぜその様な状況になっているのかという謎が読者を翻弄します。

その冷遇具合がとにかく秀逸なんですねぴかぴか。気にしなければ「大したことない」のに、ちょっと深読みすると「やはり歓迎されてない」と受け取れる内容になっていて、なんとなくイヤ〜な雰囲気を醸し出す場面描写が素晴らしかったでするんるん
主人公が妊婦なだけに、妊娠を経験することのない男性や、まだ妊娠を経験したことのない女性には主人公の思い過しに感じてしまう箇所ももしかしたらあるかもしれませんが、出産を経験した私から見ると、初っ端の主人公が母親に里帰り出産をしたい旨を告げたときの母親の「ちょっとお父さんと相談させて」の返答だけでかなり衝撃どんっでした。そしてそこから既に私の心は近藤さんの手中に収まっていたのでしょうねラッキー

徐々に家族のギクシャク具合が主人公の思い過しでなかったとわかってくるのですが、その理由の小出し具合も最高で、気が付けばラストまで一気読みだと思いますので、是非是非皆様読んでみてくださいね。もちろんタイトルの意味もわかるようになっていますよわーい

ちょっとネタバレちっくになってしまいますが、私なりにこのタイトルというか美和ちゃんの疑問に大人として返答させて頂くなら、
「命の重さは同じ。だからこそその重い命を産み出す側の人間の責任能力が問われるんだよ。」
って言うかな。なんか当然のことすぎて胸に響く言葉とも思えないけれど、それが全てかなって。。。

ラストの終わり方も読者にちょっとモヤモヤを与えるものだったし、終始楽しませてくれた本書&近藤さんありがとうございましたーラブラブ!!


  ├ 近藤史恵 -
近藤史恵 『キアズマ』


*あらすじ*
決して交わるはずのなかった、俺たち。喪失を超えるように、ただ走り続ける。命をかける覚悟? 誰かを傷つける恐怖? そんなもの呑み込んで、ただ俺は走りたいんだ。ひたすらに、自分自身と向き合うために。助けられなかったアイツのために。一年間限定で自転車ロードレースに挑むことになった正樹。「サクリファイス」シリーズ4作目、
新たな舞台は大学自転車部! ファン待望の最新長編小説。

*感想*
待ってました!! 近藤史恵さんのサクリファイスシリーズ4作目!!ぴかぴかラブラブ
という割には、本書発売は2013年4月だったという…たらーっ 近藤さんの新刊チェックし忘れてました汗 すみません汗

本書の舞台は大学の自転車部。そして主人公は自転車部部員に貸しができてしまったばっかりに、一年限定で自転車部に入部することになった岸田正樹。前3作では、既に自転車競技に魅了されている男たちを描いていたのだけれど、本書では全くの素人がロードレースに目覚めていく過程を描いていて、新鮮で面白かったですぴかぴか しかも今回はレース中の精神的かけ引きや戦略で読者をドキドキさせるだけでなく、主人公やチームメイトの背負い込んでいる過去についても触れていて、視点広く楽しめた作品でした桜

とはいえ、300ページ弱の物語の中に、一人の青年が自転車部に入ることになったキッカケ〜ロードレースで活躍するまでを描いているので、全体的な作りと表現が粗い印象でした。せっかくならもう少し詳細な表現と展開で読みたかったな汗 小説新潮での連載だったそうなので、ページ数の制約があったのかもしれませんが…。そして終わり方もまだまだロードレースについても過去の傷についても完全な解決には見えない締め方に読めたので、もしかして続編くるのかな!?

本書には前3作に登場したチカや伊庭などは登場せず、独立した物語になっているのですが、ある方だけはちょっとだけ特別出演!してくれるので、もしお時間ある方は前3作から読んでみてくださいラブラブ
絶対にこのシリーズ面白いと思いますよ〜ラブ



  ├ 近藤史恵 -
近藤史恵 『はぶらし』


*あらすじ*
脚本家の鈴音は高校時代の友達・水絵と突然再会した。子連れの水絵は離婚して、リストラに遭ったことを打ち明け、1週間だけ泊めて欲しいと泣きつく。鈴音は戸惑いながらも受け入れた。だが、一緒に暮らし始めると、生活習慣の違いもあり、鈴音と水絵の関係が段々とギクシャクしてくる。約束の1週間を迎えようとしたとき、水絵の子供が高熱を出した。水絵は鈴音に居候を続けさせて欲しいと訴えるのだが……。人は人にどれほど優しくなれるのか。救いの手を差し伸べるのは善意からか、それとも偽善か。。。

*感想*
日本人女性によくある「言葉に表さなくても察して欲しい」という心情を逆手に取った、ちょっと怖い作品でした冷や汗

昔の友人(水絵)を1週間だけ自宅に泊めることになった鈴音。しかしどこか浮世離れしている水絵の言動に鈴音は違和感を抱き始める。その水絵の常識と認識の違いをまず読者にわからせる為に用いたエピソードがタイトルの通り「はぶらし」でした。
新品の歯ブラシを鈴音に借りて「明日新しいのを買って返すから」と言う水絵。そして翌日水絵は本当に『昨夜使った歯ブラシを鈴音に返却』するんです。水絵の昨夜の言葉は間違っていないけれど、一度使用した衛生品を返却させれても使用できないのだから、そういう場合は未使用の新品をお返しするのが常識なはずなのに… このエピソードを通して水絵の感覚を読者に伝える技は拍手ものでした拍手

その後も謙虚な様で図々しい水絵の言動に鈴音は苛立ちを募らせていき、とうとう口論になるのですが、その口論で水絵が発する言葉は、ケンカ下手な私にとても勉強になるものだったわ〜イヒヒ 水絵の主張はとにかく「相手の気持ちを慮ったり、推し量ったりしない」に尽きるものだったのです。しかしそれが口げんかで勝つ方法なのかもね(笑)

特に勉強になった水絵のセリフは(口論方法を勉強する必要があるのかもわかりませんが)

努力して今の環境を手に入れたという鈴音に対して
「努力ってなに?じゃあ、わたしがなんにも努力しなかったって言うの?」
「じゃあ、結婚しなかったらよかったの?耕太を産まなかったらよかったって言うの?わたしが今、困ってるのは、みんなわたしのせいなの?」
挙句の果てには、どう考えてもはやく家を出て行ってもらいたいと思っているであろう鈴音に対して、しれっと「就職が決まるまでは居させてほしい」と言える図太さもあり、読んでいて呆れを通り越して恐怖を感じました。

困っている人を助けたい気持ちはあるけれど、どこまで自己犠牲を強いてまでやるべきか考えさせられ、ちょっと胸が痛くなる作品です。自分がお人好しだと思っている人も、思っていない人も、自分の常識枠に収まらない人もこの世の中にはいるのだと知るいい機会にもなるであろう本書は楽しみながらも勉強になる1冊だと思いますよ〜上向き


  ├ 近藤史恵 -
近藤史恵 『サヴァイヴ』

*あらすじ*
著者の傑作長編「サクリファイス」「エデン」に登場する男たちの過去と未来を描いた短編集。
チカ、伊庭、赤城、石尾、彼らはどの様な世界で生き、そしてどこへ進んでいくのか。。。

*感想*
「サクリファイス」「エデン」のスピンオフ短編集になっています。「サクリファイス」「エデン」に魅了された私には、大きなドラマやミステリーが含まれていない本書でも、非常に面白く満足な1冊でしたグッド

本書は「サクリファイス」「エデン」に登場したロードレーサーたちの過去と未来が描かれるので、是非ともこれら前2作を読んでから本書を読まれることをお勧めします。とは言っても、じつは私が著者のロードレースシリーズにハマった切っ掛けは、本書の3話目に収録されている「プロトンの中の孤独」なんですがねたらーっ(アンソロジー『Story Seller』収録作品)。

それにしても今回もロードレースの魅力満載でしたね〜。スピードへの恐怖、チーム競技でありながらリザルトに載るのは個人である現実、エースとアシストの役割、そしてドーピング…。男性って割とさっぱりした性格の人が多いイメージがあるのですが、本書の中には嫉妬と自尊心の微妙な心理も描いていて、レース競技という内容だけに偏らずに人間描写も上手い著者の筆力に感服です!

最後に、内容には大きな影響を及ぼしていなかったけれど、私は伊庭のこの思考にとても納得しました↓ “俺には彼らの方が母親に甘えているように見えた。甘えているから、たとえ母親がいつ帰るともわからない自分のために、食事を作って待っていようが、平気でいられるのだ。”(「スピードの果て」より) なるほど、その通りですよね〜。

次回は是非また長編ロードレース作品をよろしくお願いしたいです!


  ├ 近藤史恵 -
近藤史恵 『エデン』

*あらすじ*
あれから三年―。白石誓は、たった一人の日本人選手として、ツール・ド・フランスの舞台に立っていた。だが、すぐさま彼は、チームの存亡を賭けた駆け引きに巻き込まれ、外からは見えないプロスポーツの深淵を知る。そしてまた惨劇が…。ここは本当に「楽園」なのだろうか?過酷なレースを走り抜けた白石誓が見出した結論とは。

*感想*
2008年に大藪春彦賞と本屋大賞2位を受賞した『サクリファイス』の続編です 『サクリファイス』がとても面白かったので、迷うことなく本書を読みました

いやぁ〜 本書も面白かったよ〜 今回もロードレースの勝敗に関する駆け引きが上手く書かれているので、相変わらず自転車競技に詳しくない私でも自転車の世界に引き込まれたし、そしてラストはしっかり人間ドラマで読ませてくれました 主人公・チカの“外国かぶれ”してない言動がとても好感を持て、『サクリファイス』の時と同じように、心底素直にチカを応援したよ
あえて読みにくかったことをいうと、カタカナ名詞が多く出てくるので(クレディ・ブルターニュ、アレジオ・ネーロ、マイヨ・ジョーヌなどなど)何かチーム名で、どれが人名なのかと前半は混乱してしまいました 後半にはすっかり慣れたけどね

本書は独立した単行本でありますが、チカが日本でどういう経験を経て自転車競技の本場・ヨーロッパまで来たのかを知っていると、より一層本書を楽しめるので、やはり『サクリファイス』から読む事を私はオススメします ロードレースに興味がない方も是非読んでみてください!絶対に面白いですよ






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近藤史恵 『砂漠の悪魔』


*あらすじ*
親友を裏切った報いがこの過酷な人生なのか?
小さな悪意から親友を死なせてしまった広太は、平凡な大学生活から一転、ヤクザに脅されて厳寒の北京へ旅立つ。そこで日本人留学生の鵜野と出会い、広大な中国西部を旅することに…。第十回大藪春彦賞受賞者の近藤史恵が、日本と中国を舞台に描く渾身のロードノベル!


*感想*
私にとって初のロードノベルでしたが、大変読み易く、中国の匂いを感じながら旅の世界に没頭しました。


ロードノベルを書く上で、「なぜ旅に出る事になったのか?」という前振りが重要になると思うのですが、本書では「友人を自殺へと追いやってしまった」という事が起源となります。しかもそれは「偶然」ではなくて「ちょっとアイツを懲らしめてやろう」的な、人間の心の奥に潜むちょっとした醜い感情から始まった事だったので、とても現実的な展開に私は思えました。


中国大陸を旅する場面描写も素晴らしいものでした。それぞれの土地の情景が目に浮かび、そして中国人の国民性もよく伝わってきました。特に北京から西安まで列車で移動する場面では「甘いことは、弱いことと同じ。優しくすれば、相手はつけあがる。」という、近年の中国の外交姿勢からもよくわかる国民性が簡潔に描かれていたと思います。そして少数民族問題も上手く盛り込まれていて、日中の違いをよく理解でき、深みを感じました。


タイトルの「砂漠の悪魔」が登場するのは、本当に最後の最後だったので、少々気を揉みましたが、旅のスピード感と主人公の感情の変化を繊細に感じられる秀作だと思います。


そして
「たぶん、ぼくは退屈してただけなんだ」
これは本書を集約する素晴らしい名文だったと私は思いました。


中国へ旅行した事がある人もない人も、そして中国に感心がある人もない人も、楽しめる1冊だと思います!!



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近藤史恵 『サクリファイス』


* あらすじ*
勝つことを義務づけられた〈エース〉と、それをサポートする〈アシスト〉が、冷酷に分担された世界、自転車ロードレース。初めて抜擢された海外遠征で、僕は思いも寄らない悲劇に遭遇する。それは、単なる事故のはずだった――。二転三転する〈真相〉、リフレインの度に重きを増すテーマ、押し寄せる感動! 青春ミステリの逸品。



*感想*
2008年に大藪春彦賞と本屋大賞2位を受賞した本書。当時から私も気になってはいたのですが、私には無縁のスポーツ『自転車ロードレース』の物語だということで、敬遠してしまっていました。つまり“読まず嫌い”をしちゃってたんです… しかし先日読んだアンソロジー(Story Seller)で、著者の自転車ロードレースを描いた短編『プロトンの中の孤独』を読み、そのスポーツの面白さと著者の筆力に惹かれ、やっと本書を読みました。


いやぁ〜〜“読まず嫌い”をしてしまっていた事が勿体ない位、面白かったです もっと早く読めば良かった


『プロトンの中の孤独』の感想にも書いたのですが、自転車ロードレースという競技を全く知らなくてもすんなりと物語に入り込むことができ、競技の過酷さや、レースの駆け引きが臨場感たっぷりに味わえ、とてもドキドキハラハラ楽しめました。終盤に判明していく真相の二転三転は、一気読み間違いなしです!! そして読後は 【sacrifice サクリファイス [名] いけにえ、犠牲、犠牲的行為】という意味の重さを考えさせられることでしょう。


「自転車ロードレースには興味ないな〜」と本書を敬遠している方!この本の面白さは間違いなしなので、是非是非読んでください!熱い人間ドラマがここにはあるから

 



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