読書が大好きな主婦の読書記録です☆
年間100作品読破を目指して日々読書に明け暮れ、本を通して感じた事や感動を忘れたくないので、記録として綴っています(*^。^*)
吉田修一 『犯罪小説集』

 

 

*あらすじ*

人はなぜ、罪を犯すのか?

人間の奥深くに潜む、弱く、歪んだ心。どうしようもなく罪を犯してしまった人間と、それを取り巻く人々の業と哀しみを描ききった5篇。

 

*感想*

『青田Y字路』田舎町で行方不明になった女子児童

『曼珠姫午睡』中学時代の同級生が犯罪者になったと知った主婦

『百家楽餓鬼』会社のお金を使い込んでしまった経営者

『万屋善次郎』村八分どころか村十分にされた男

『白球白蛇伝』プロ野球選手を引退した後も金使いの荒かった男

 

犯罪者というのは、生まれ持っての犯罪者なのではなく、私たちの過ごす日常を同じように生きているうちに、何か歪みが発生して、自分で自分を制御できなくなり、罪を犯すに至ってしまうものなのかも…。

と感じた作品でした。

 

収録されている5篇には、それぞれ事件とその犯人が登場してきます。犯人が罪に手を染めるまでの転落とその周囲の状況がしっかり描かれているので、突拍子もない感がなく、悪いことだと分かっていても、すんなりその犯罪の世界を私は受け入れてしまいました。

 

しかし、ここからが本書の賛否に分かれるところだと思うのですが、本書の骨組みは

犯罪が起こった→犯人はわかっている→終わり。

なんですよ汗汗汗

 

つまり、この事件に関わった人たちがその後どうなったのかは描かれないのです。

『犯罪小説集』というタイトルを念頭に考えれば、犯罪が起きたところまでで十分な短編集だと分かっていますが、私としては「ええええ〜〜〜汗 この人たちがその後どういう人生を歩むのか読ませてよ〜〜汗」と少々不完全燃焼でしたたらーっ。吉田さんの文章が、硬すぎず、柔らかすぎず、なめらかで、本当に読んでいて気持ちが良いからこそ、もっともっとどの話も続きを読みたかったです泣き顔

 

あ、でも『曼珠姫午睡』のラストはとっても良かったですぴかぴかぴかぴか

「…いるのよ。世の中には『普通の主婦』も」

この一言に、男にだらしがなく犯罪者になってしまったゆう子とは違う、という英里子意思が出ていてカッコよかったですぴかぴか。よく犯罪者の経歴を調べていくうちに、その犯罪者に同化してしまうような小説はあったのですが、この話はラストでその誘惑を振り払い、キメ台詞に『普通の主婦』という“普通ではない一言”を放ったところにシビレましたポッ。多分ね、『普通の主婦』だったら、まずそういうマッサージにも行かないと思いますよ(笑)イヒヒ

 

新しい描き方の犯罪小説集だったので、こういう小説もあるんだなと興味深かったですラッキー

 



  ├ 吉田修一 -
吉田修一 『橋を渡る』


*あらすじ*
ビール会社の営業課長、明良。部下からも友人からも信頼される彼の家に、謎めいた贈り物が?都議会議員の夫と息子を愛する篤子。思いがけず夫や、ママ友の秘密を知ってしまう。TV局の報道ディレクター、謙一郎。香港の雨傘革命や生殖医療研究を取材する。結婚を控えたある日…2014年の東京で暮らす3人の悩み、ためらい。果たして、あの選択でよかったのか―

*感想*
傑作なのかそうでないのか、意見が真っ二つに分かれるであろう独特な結末を迎えた作品でした。

本書は「春」「夏」「秋」「そして、冬」「エピローグ」の5章から成る作品で、「春」「夏」「秋」で登場した人々のその後が、「冬」「エピローグ」で終結するという群像劇です。春・夏・秋で語られた『点』をどうやってラストで『線』で繋ぐのか…すごく興味深くて、冬の章までハイスピードで読めたのですが、『冬』の物語設定があまりに想定外すぎて「えええぇぇぇっっ!マジでぇぇぇっっ!?びっくり」と私は叫びました(笑)

その結末はネタバレになってしまうので最後に書きますがたらーっ、そこに辿り着くまでの前半3章は、激しい事件やミステリーが勃発するわけではないけれど、人々が日々の生活を送る上での悩み・苦しみ・憤り・挫折・悦びなどを、実際に2014年にあったニュース(国会で女性議員への「産めないのか」ヤジ事件爆弾、橋本聖子議員の高橋大輔選手へのキス強要事件爆弾などなど)を織り交ぜながら綴られ、人間のエゴや自我というものを俯瞰で見ることができて、まるで他人の人生を覗き見てるリアルさがあり、面白かったです。


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衝撃のラストとは、「冬」の章の時代設定が2085年で、その前の章で登場してきた人物達の子孫が登場し、「秋」の章で触れていたクローン人間が実用化されている世界になっていた上に、「秋」の主人公だった謙一郎がタイムスリップしてきてしまう!という、なんとまぁ異次元の話だったのですが… 皆さんはこの展開楽しめましたか?
私は、もっと現実的な展開の方が好きな方なのですが、とにかくずーっと気になっていた数々の問題↓

孝太郎と結花の赤ちゃんはどうなったのか…
朝比奈達二の芸術と、それを否定した歩美のその後は…
夫の不正を知って苦しむ篤子はどうしたのか…
婚約者の浮気を知った謙一郎は…

の結末を知れたので良かったと思いましたモグモグ

ファンタジー同様に、このタイムスリップ手法を取り入れてしまうと「なんでもアリ」の展開になってしまうので乱用はできないでしょうけれど、今回は全く予期せぬ状態だったので「こういう展開もアリなのかな」と私は受け入れられましたチョキ
こういう新次元ストーリーもたまにはいいかもしれませんね。最近近い将来の心配ばかりしていたので、70年後の事を考える良いキッカケというか刺激になりました砂時計
是非多くの方に本書を読んでもらって、本書が70年後にも残っているといいなと思いますラッキー


  ├ 吉田修一 -
吉田修一 『怒り』


*あらすじ*
殺人事件から1年後の夏。房総の漁港で暮らす洋平・愛子親子の前に田代が現われ、大手企業に勤めるゲイの優馬は新宿のサウナで直人と出会い、母と沖縄の離島へ引っ越した女子高生・泉は田中と知り合う。それぞれに前歴不詳の3人の男…。惨殺現場に残された「怒」の血文字。整形をして逃亡を続ける犯人・山神一也はどこにいるのか?『悪人』から7年、吉田修一の新たなる代表作!


*感想*
私の大好きな群像劇スタイルでとっても面白かったですラブ こういう話大好きラブ  一気読みでしたラブラブ 『悪人』ほど毒は強くなかったけれど、そういう系統が好きな方には絶対に面白いと思いますよ桜

今回この群像劇を繋げていくのは、1年前に起きた「八王子夫婦殺害事件」の逃亡し続けている容疑者、山神一也に似ている男たち3人。
漁港で履歴書を詐称して働く田代。
発展場でゲイ男性に拾われた直人。
沖縄の離島で野宿する田中。

上巻ではあまり山神に関する特徴が出てこないので、まずは3人の男とその彼らをとりまく人々の日常が濃く描かれていきます。それゆえ下巻で徐々にどの男が山神なのか推測する段階になると、真相究明に向けたドキドキハラハララブと共に、その3人の男を慕い愛し始めていた周りの人の心情を思うと切なくもなり、涙が出そうなシーンもありましたポロリ
誰が犯人なのかのミステリーと共に「大切な人をどこまで信じられるのか?守れるのか?」というテーマを深く盛り込んでくる吉田さんの手腕はさすがですねぴかぴかぴかぴか

でもね、でもね、↓ここはめっちゃネタバレ感想(反転して読んでください)

結局『怒』の血文字の意味はなんだったのですか!?
そしてなぜ題名を『怒り』にしたのですか!?


そこがもっと明確になっていたら、文句なしの5つ星★★★★★だったのに、ちょっと残念でした汗


  ├ 吉田修一 -
吉田修一 『さよなら渓谷』


*あらすじ*
緑豊かな桂川渓谷で起こった、幼児殺害事件。実母の立花里美が容疑者に浮かぶや、全国の好奇の視線が、人気ない市営住宅に注がれた。そんな中、現場取材を続ける週刊誌記者の渡辺は、里美の隣家に妻とふたりで暮らす尾崎俊介に、集団レイプの加害者の過去があることをつかみ、事件は新たな闇へと開かれた。呪わしい過去が結んだ男女の罪と償いを通して、極限の愛を問う渾身の傑作長編。

*感想*
「憎しみ」か「償い」か、それとも「愛」か―

本書の前半は幼児殺害事件の犯人は誰か?というミステリー作品なのかと思ったのですが、中盤でこれはとある夫婦(俊介・かなこ)の他人には理解し難い関係性とその過去を描いた物語なんだと気が付きました。

その俊介とかなこの関係性は、ある事件の加害者と被害者ということなのだけれど、私自身もそして身近な人でもそういう経験がある人はいないので、かなこの選んできた人生をフィクションでしか受け止められなかったです。でもね読んでいて本当に胸が痛くなりましたポロリ。それは吉田さんの文章とストーリー展開がすっごく繊細だったからだと思います。

その繊細さは、俊介とかなこの過去を全て知った後でないと気が付けないと思うので、読後に是非とももう一度本書を振り返ってみてほしいです。
俊介が少年野球のコーチをしていることから伝わってくる人間性や、かなこが「面接にいく」と言ったときの勇気や、そして何よりも二人の性交について「二人の体液がまじりあった場所で」程度の描写しかしなかったその匙加減… うーん絶妙で最高!!

そしてラストの
「…あの事件を起こさなかった人生と、かなこさんと出会った人生と、どちらかを選べるなら、あなたはどっちを選びますか?」
これって…これって… 究極の愛を感じるね。
俊介がかなこを大切に思う理由が「キズモノ」だからではないことを私は信じます…。
即物的な激しい展開がある物語ではないけれど、内に熱いものを秘めている本書、是非読んでみてね〜ぴかぴか

そうそう本書は映画化もされていて、本年度モスクワ国際映画祭コンペティション部門審査員特別賞受賞したそうですよ〜ぴかぴか桜
映画版興味ある方は是非こちらご覧ください↓
http://sayonarakeikoku.com/


  ├ 吉田修一 -
吉田修一 『愛に乱暴』


*あらすじ*
妻も、読者も、騙される! 『悪人』の作家が踏み込んだ、〈夫婦〉の闇の果て。これは私の、私たちの愛のはずだった――。夫の不実を疑い、姑の視線に耐えられなくなった時、桃子は誰にも言えぬ激しい衝動に身を委ねるのだが……。夫婦とは何か、愛人とは何か、〈家〉とは何か、妻が欲した言葉とは何か。『悪人』『横道世之介』の作家がかつてない強度で描破した、狂乱の純愛。本当に騙したのは、どちらなのだろう?

*感想*
義両親自宅の離れに旦那と2人暮らしをする桃子。義父は体調を崩して入院したものの、時々お見舞いに顔を出したり、同じ敷地内の母屋で暮す義母のゴミ出しをしてあげたりと桃子なりに真守の両親も大切にしてきたのに… 真守の浮気相手から無言電話がかかってきて全てが崩れ始める… という本書。

いくら夫婦には夫婦にしか分からない事情や歴史があるとはいえ…
真守はひどい!!ぶー 何様だと思ってるんだ!!
桃子はさっさとあんな男とは別れちゃいなよ!!

と非常にイライラもさせられました。つまりそれだけ感情と情景描写が秀逸だったということだね〜ぴかぴか上向きぴかぴか そして全体の小説としての構成は、読者をミスリードするトリックありの、かなりの力作だったと思いますラブ

特に本書中盤で読者が「騙されていた!(ミスリードさせられていた!)」と気が付いてからは、本書の全貌が一気にクリアーになって、一層本書の行く末が気になり一気読みでした。しかも後半に脇役たちがいいスパイスを放り込んでくるんですよね… 地元友達悦子の逆DV話や、ジョンソンの元上司の本音とか、極めつけは親族からの「警察呼びますよ」とね…ムニョムニョ 

愛の中に乱暴と切なさのある話で、ラストが白黒はっきりしたものではなかったけれど非常に満足な1冊でしたぴかぴかラブ


  ├ 吉田修一 -
吉田修一 『悪人』


★★★★☆

*あらすじ*
福岡の生命保険会社で働く石橋佳乃が絞殺された。容疑者と目されるのは長崎に住む土木作業員の清水祐一。佳乃と祐一の出会いは携帯サイトだった、そして祐一は佳乃殺害後に携帯サイトで知り合った違う女性と会う約束をする。残された家族や友人たちの思い、そして祐一と新たなる女性の行く末は。。。一つの事件の背景にある、様々な関係者たちの感情を静謐な筆致で描いた渾身の傑作長編。

*感想*
久し振りにページをめくる手が止まらず、寝る間も惜しんで読みふけってしまいました。ストーリーや殺人について、特別衝撃的な展開やトリックがあるわけではないのですが、この事件に関連する人々の視点と感情が交互に描かれ、その描写がとにかく上手いんです! 

殺害された佳乃は、佳乃の両親から見れば可愛い娘だった。しかし佳乃の同僚から見れば、彼女には高飛車な所があるちょっと嫌な人だったり、佳乃が思いを寄せる男性から見ればウザイ女だった。
一方殺害をした祐一は、老人が多く住む街で、老人の手助けをよくしてくれるいい青年だったし、祐一の祖父母からも頼りに、そして可愛がられていた。そんな反面、何を考えているのかよく分からない青年だとも言われる事もあった。
通常、『被害者=可哀想な人』 『加害者=悪人』 というレッテルを張られ易いこの世の中や、フィクション小説ですが、単純にそうとは決め付けられないという切り込みを入れている、本作品はとても現実的なストーリーで良かった。 

一言で本書を表すならば
『人間の強さ・弱さ・優しさ・身勝手さ、もろもろ沢山の思いと感情が詰まった人間味のある“生きている小説”』です。
お勧めですぴかぴか


  ├ 吉田修一 -
吉田修一 『7月24日通り』



★★★☆☆

*あらすじ*
主人公の小百合は自身の住む「地味な地方都市」をポルトガルのリスボンになぞらえて、通りや町名を呼んでいる。そして「地味な自分の外見」にもコンプレックスを抱き、恋に積極的になれずにいた。理想と憧れを追う小百合だったが、ある事をキッカケに「間違ってもいいから、やってみる」と前向きな女性に変わる物語。

*感想*
女性の微妙な心理をよく理解している話で、著者が男性だという事が信じられませんでした。特に高校時代に『女子の話題の端にものぼることもない地味な男子』に告白された小百合が『私はああいう男の子に選ばれるような女なんだ』と思い落ち込む所や、モデルにスカウトされるほど美形の弟を唯一の誇りとしている所などに共感というか、その妙な「理想の自分と現実の自分」のギャップに悩まされている心理が理解できて面白かったです。

地味な地方都市の建造物や道路を「ジェロニモス修道院前」や「フォンテス・ペレイラ・デ・メロ大通り」と置き換えて呼んでいる視点がまた特に面白く、小百合の「理想の世界への願望」を読者に上手に伝えていたのではないでしょうか。この著者の視点は素晴らしいと思いました。感性を刺激する様なまったりとしたストーリー展開の中で、女性達の心境が解り易く描き出された読みやすい作品でした。
いろいろな可能性を秘めた結末も、とても良かったと思います♪


  ├ 吉田修一 -
吉田修一 『最後の息子』
最後の息子

★★☆☆☆

*あらすじ*(「BOOK」データベースより引用)
新宿でオカマの「閻魔」ちゃんと同棲して、時々はガールフレンドとも会いながら、気楽なモラトリアムの日々を過ごす「ぼく」のビデオ日記に残された映像とは…。
第84回文学界新人賞を受賞した表題作の他に、長崎の高校水泳部員たちを爽やかに描いた「Water」、「破片」も収録。爽快感200%、とってもキュートな青春小説。

*感想*
表題作と「破片」は芥川賞候補に挙がった作品です。芥川候補というだけあって、ストーリーで楽しむのではなく、心で感じる作品集でした。
私は伏線がガッチリ張られている様な、展開重視の読者なので正直本書はページをめくる手が大変重かったです…。さらに表題作意外の2作品は長崎弁での会話となるため、登場人物達の雰囲気を感じ取るのにも一苦労でした。
描写や比喩は素敵だったのですが…残念。


  ├ 吉田修一 -
吉田修一 『パレード』
パレード


★★★☆☆

*あらすじ* 
5人の若者の奇妙な2LDK共同生活を描いた青春小説。いつの時代も現実は厳しい。でもふさわしい自分を演じればそこは、誰もが入れる天国になる。
杉本良介21歳、H大学経済学部3年。
大垣内琴美23歳、無職。
小窪サトル18歳、「夜のお仕事」に勤務。
相馬未来24歳、イラストレーター兼雑貨屋店長。
伊原直輝28歳、インディペンデントの映画配給会社勤務。
5人の生活がオムニバスで綴られる。

*感想*
章によって主人公が変わるのですが、時系列がそのまま流れているので非常に読みやすいし、長編小説の様に繋がっていくので面白かったです。

序盤は「よく共同生活なんてできるよなぁ。。。 他人と一緒に生活するなんて絶対に疲れるのに…」と思って読み進めていたのですが、後半には段々とその共同生活ができる理由がわかってきます。それは登場人物達が皆、陽と陰を持ち合わせているからなのですが、その描写が、すごく現実味ある人物像だったと思います。そう、人間はそんなに綺麗な部分や、強い部分だけを持っているわけではないよね。
しかし、こんな様な人間付き合いをしているだけでは、人生は寂しいだけだと私としては思いますが。

こういう人間の内面についてばかり描くと、非常に暗くなりそうな内容なのですが、彼らの隣の部屋「402号室で行われている秘密の商売」についてなど、面白いエピソードも含まれていて楽しめました。


  ├ 吉田修一 -
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