読書が大好きな主婦の読書記録です☆
年間100作品読破を目指して日々読書に明け暮れ、本を通して感じた事や感動を忘れたくないので、記録として綴っています(*^。^*)
桐野夏生 『バラカ』

*あらすじ*
震災のため原発4基がすべて爆発した!警戒区域で発見された一人の少女「バラカ」。ありえたかもしれない日本で、世界で蠢く男と女、その愛と憎悪。想像を遙かに超えるスケールで描かれるノンストップ・ダーク・ロマン!

*感想*
2011年東北地方太平洋沖地震をモチーフに、『大震災前』『大震災』『大震災8年後』という大きな3章に分かれて、人々の欲望や暮らしが綴られる650ページの長編小説でした。読み応えかなりありました!

物語は、実際にあった震災を元に描いているので完全なフィクションではなく、しかし作中では原発4基全てが爆発したため、東京も避難勧告地域に指定されてるという設定でした。それは「ありえたかもしれない日本」を描いていて、そして「本当に自分の住んでいる地域の放射線量は大丈夫なのだろうか?」という疑問を再び抱き、読んでいて怖かったです唖然

その恐ろしい世界の中で、群像劇的に描かれる人々の暮らしは、とても人間臭くて、グロテスクで、生々しくて、気持ち悪くなりました。

・男は要らないけど、子供が欲しくてドバイの赤ちゃん市場を訪れる日本人キャリアウーマン。
・酒と暴力に溺れ、妻が宗教にのめり込み、ドバイに移住を決めた日系ブラジル人。
・ゲイだった過去を持つ人気牧師。

そして

・平気で嘘をつき、女を苦しめ、人の死を悼む気持ちも持たない悪魔的な男。

 

この人たちには「バラカ」という一人の少女という共通点があって、この大人たちの都合のせいで、めまぐるしく変わるバラカの環境・苦悩・人生は読んでいて辛く、バラカに幸せが訪れるのか気になって、はやる気持ちで読み進めましたポロリ しかし物語終盤では、大人たちがバラカに執着する意味と必要性がかなり不透明になってしまっていて、少々物語に無理を感じました。。。

 

一応文章では
「バラカ」という名の、反原発運動の象徴。または棄民の象徴。

という記載はあるものの、大震災と放射能によって家族・家・学校・健康の全てを失った子供なんてバラカ以外にも沢山いたと思うのですよ…なんせ原発4基全て爆発の設定なのですから。。。

なので、あそこまでしたバラカに執着した川島の行動が理解できなかったし、しかも川島の最後もあっけなくて少々残念でした。

 

でも、本書には私たちが忘れていはいけないことが多く書かれていて、社会派エンタメとして重みのある内容としても楽しめて良かったですぴかぴか

 

〜本文より〜

もう震災から8年も経ったから、まだ仮設住宅があって、ここで避難民が暮らしているなんて、今の日本人はほとんど忘れているでしょう。オリンピックとか、ワールドカップとか、前の方ばかり向いているから。

 

まだまだ復興支援応援していきましょうね!!

そして、登場人物たち(特に川島)の気持ち悪さ、おぞましさは「さすが!これでこそ桐野夏生!」と言えるもので、久々の私の好きな桐野節に嬉しくて震えました(笑)

「俺、無精子症なんだ」

ってどの口が言ってるんだー!!ってね(笑)



  ├ 桐野夏生 -
桐野夏生 『奴隷小説』


*あらすじ*
時代や場所にかかわらず、人間社会に時折現出する、さまざまな抑圧と奴隷状態。それは「かつて」の「遠い場所」ではなく、「いま」「ここ」で起きてもなんら不思議ではない。本作を読むことも、もしかすると囚われのひとつなのかも――。
何かに囚われた奴隷的な状況であることのみが共通する、七つの物語。桐野夏生の想像力と感応力が炸裂した、超異色短編集。

*感想*
肉体的・精神的に囚われた人々を色々なシチュエーションで描いた短編集でした。

あらすじを一部紹介すると
本『泥』突然原理主義者らしき兵士に襲われ、泥に囲まれた島に囚われてしまった女子高生たち。
本『雀』村の長老との結婚を拒絶する女は舌を抜かれてしまう。それがこの村の掟。そしてあらたな結婚の相手として、ある少女が選ばれた。
本『神様男』アイドルを目指す「夢の奴隷」である少女。彼女の「神様」の意外な姿とは。
などです。
どうですか皆さん!このあらすじを読んで本書を手に取る気が起きましたか?

「なんだか難しそうな話っぽいなぁ〜あせあせ」「硬そうだなぁ〜あせあせ
などとつぶやいているそこのあなた!!ではこのあらすじはどうだ!!イヒヒ

本『ただセックスがしたいだけ』男しかいない村に、冬の期間だけ女が体を売りに来る。この冬初めて女を知ってしまった青年の行く末は…。

という、社会的や情勢的に奴隷になってしまっていた話だけでなく「煩悩」の奴隷になってしまったという、多少親しみのもてる話も載っていますよ(笑)

全話に共通しているのが、「囚われ」について描かれるのだが、ラストに結局「そこから解放されること」も「救い」もないってこと。しかしそんな状況でも主人公たちからは絶望が醸し出されていない不思議なバランスの小説なので、読後感は少々重いものの、さっくりと読み進めることができましたぴかぴか
でも結局私が一番読み易かったお話も『ただセック〜…』なんですけどね(笑)

この本をきっかけに自分は何に囚われているのかを考えるのも面白いかもしれませんね。
過去の記憶やトラウマだったり、現在の仕事や趣味だったりね。本書の題材は面白いので、続編がもしも出るならば、次回はもう少し分かり易い話が多いと、私の好みに近くなるのかなと思いました。例えば、アイドルの魅力に囚われてしまう主婦の話とかね←あ、私のことか(笑)たらーっ


  ├ 桐野夏生 -
桐野夏生 『夜また夜の深い夜』


*あらすじ*
顔を変え続ける母とアジアやヨーロッパの都市を転々とし、四年前にイタリア・ナポリのスラムに住み着いたマイコ。国籍もIDもなく、父親の名前も、自分のルーツも、わからない。そんなある日マイコは、母との口論の末に家を飛び出してしまい、難民のエリスとアナと暮すようになる。
マイコの母はどんな罪を犯したのか。マイコは何者なのか。魂の疾走を描き切った、苛烈な現代サバイバル小説。

*感想*
女性の芯の強さを描くのが上手い桐野さんかわいい 殺人を犯す主婦『OUT』、家族に軽んじられ家出をする主婦『だから荒野』(←ドラマ化おめでとうございますぴかぴか)など、基本的に主婦を主人公とした話が多いのですが、今回は18歳の少女が主人公の物語でした。

しかし主人公が主婦から18歳の少女(マイコ)になろうとも、桐野さんの主人公を追い詰め、そして強くさせていく筆力に手緩さはなく、マイコを取り巻く人々のナポリに辿り着くまでの人生が非常にグロテスクに描かれ、桐野ワールド全開で一気読みでした!

そのマイコを強くさせていくファクターというのが、内乱下にある国で家族が惨殺銃され、女性や弱者が玩具以下の扱いを受けていたというエリスのそれまでの境遇であったり、とにかくお金を手に入れるために墓場から骸骨を持ち出す酷い仕事だったり、読んでいて胸が痛かったですポロリ。しかも「では平和な日本に生まれていたら幸せに暮らせたのか?」といえば日本人のシュンがナポリに来た本当の理由を読むことによってまた考えさせられ、エンタメでありながらも奥が深い作品でした。

ただ唯一謎だったのが、なぜマイコが七海という人に手紙を綴る形で話を展開させていったのかということ。ので読後に調べてみたら、どうやら七海は「重信房子」という新左翼活動家でテロリストの娘「メイ」がモデルなのでは?ということみたいですね。リアルタイムで重信房子の起こした事件などを知ってる方には、本書がさらに楽しめるかもしれませんねわーい


  ├ 桐野夏生 -
桐野夏生 『だから荒野』


*あらすじ*
傲慢な夫や息子たちに軽んじられながら、家庭をささえてきた主婦・朋美は46歳の誕生日、ついに反旗をひるがえす。衝動にかられ夫自慢の愛車で家出、「初恋の男が長崎にいるらしい」という理由で、長崎に向かって高速道を走り始めるのだった。奪われた愛車と女の連絡先の入ったゴルフバックばかり心配する夫を尻目に、朋美は自由を謳歌するが――
冒険の果てに、主婦・朋美が下した「決断」とは?

*感想*
前作の『ハピネス』に引き続き、本書も日々の生活に鬱憤を抱える主婦の話でした。
『OUT』や『グロテスク』の血生臭く、だからこそ人間味溢れる作品で桐野ファンになった方には本作はきっと物足りないことでしょうどんっ また、悩みを抱える主婦の話というのは生活感が漂いすぎていて、桐野さんに似合わない気もしました… が、主婦の私には感情移入できる箇所が多々あったし、将来我が子たちも朋美の息子のようになったらどうしよう冷や汗 などと考えながら読めて面白かったです桜

衝動的に家出した妻・朋美のロードノベルと、残された夫・浩光の日常が交互に綴られる本書。そのテイストは傷心旅行でもなく、泣きながら妻を待つ夫の悲痛さもなく、重すぎない描き方で良かったですグッド。しかも浩光の言動が滑稽で笑える箇所すらありました。特に私が爆笑してしまったのが… 朋美が浩光のゴルフバッグに入っていた黒いポーチの中身を確認したところ、その中身が「男の下心丸出し」の物だと発覚し「あんのヤロー」とつぶやいたところね(笑)「あのヤロー」でも「あいつめ」でもなく、「あんのヤロー」という文章を選んだ桐野さんのセンスすっごく好きだわぁ楽しい

本書の後半は、痴呆気味の老人が出てきて、本書がどう終結するのか少々心配したのですが、その老人が歩んできた人生や自分へ課している使命を通して、朋美に本当の荒野というのがどういう所なのかを悟らせるという流れは流石大御所!!(桐野さん)と思え、私の心もスッキリしました。
朋美のように家庭に不満のある主婦にはお勧めの1冊ですが、不満がなくとも家族のあり方などに興味がある人はなかなか面白い作品ですよ〜るんるん


  ├ 桐野夏生 -
桐野夏生 『ハピネス』


*あらすじ*
三十三歳の岩見有紗は、東京の湾岸地区にそびえ立つタワーマンションに、三歳二カ月の娘と暮らしている。結婚前からの憧れのタワマンだ。一流企業に勤める夫を持つ、おしゃれなママたちのグループにも入り、有紗の生活も順調の様に見えるが、そこにはマンションの「分譲組」「賃貸組」「WESTタワー組」「EASTタワー組」といった格差などがある、微妙な世界だった。
有紗はママ友たちに見えない壁を感じ、そしてじつは皆には夫は海外勤務と話しているが、隠していることがいくつもあった。。。
「VERY」大好評連載に、新たな衝撃の結 末を大幅加筆!

*感想*
毒のある人物描写が秀逸な桐野さんですが、今回は主婦の心情とママ友との微妙なやり取りの暗い部分をジワジワと描いた傑作でしたぴかぴか

主人公の主婦有紗は、豪華なタワマンに住み、おしゃれなママ友もいて、一見順風満帆な生活に見えます。しかし内情は夫に離婚を迫られ、義両親からも「自分で働いて生計を立てていくべき」と迫れる暮らしだったのです悲しい 自立している女性読者からみたら、音信不通の夫と義両親に資金援助をしてもらいながらもタワマンに住み続ける有紗に苛立ちを感じる人もいたと思います。しかし私は有紗の願望と孤独を共感しました。

有紗の生活は見栄や欺瞞かもしれない、でも生活レベルを落とすことや新しい境遇に踏み出すことにはすっごく勇気がいることだし、可愛い娘にあらゆる可能性を与えてやりたいと思う親心。そして何よりも音信不通にしてきている夫に対して自分はそんなに酷いことをしたのかという疑問…

そんな中で、同じタワマン住人からの匿名手紙で心を乱されたり、エレベーターにはベビーカーを畳んで乗せるべきなのではないかという意見など、私が育児をしていて「私は社会的お荷物、弱者なのかもしれない」と思っている憂鬱を代弁してくれているかのような記述がポロポロ出てきて、すっごく読み入ってしまいました。
そして気弱になっている有紗とは対照的に、夫以外の男性から愛を注がれているが故に自信と輝きを持っている様に見える美雨ママの存在… 
本当に自立している女性から見たら、有紗や私が抱いている悩みや劣等感は取るに足りない事柄だと思います。でもそれが「主婦」なんだというのを、桐野さんは見事に描いてくれていましたぴかぴか

「OUT」や「グロテスク」などの衝撃ともいえる激しい醜さを求めている方には少々肩透かし感がある作風かもしれませんが、桐野さんの表現方法の新しい一面が読めて、私は大満足な1冊でした。「VERY」連載らしく、おしゃれな小物の記述も登場するし、とても読者層を的確に獲ている秀作だったと私は思います桜


  ├ 桐野夏生 -
桐野夏生 『緑の毒』

*あらすじ*
「川辺クリニック」の院長である川辺康之は、救命救急医と浮気する妻に対して、強い嫉妬を抱いていた。そして妻が浮気相手と逢い引きする水曜の夜、川辺の邪悪な心は限界に達し、独り暮らしで睡眠中の女性を狙ったレイプを繰り返し…。


*感想*
人間の邪悪な心と嫉妬が描かれた、桐野さんらしい作品でした
しかし300ページ弱の物語の中に、何人もの登場人物がいるため、個々に描かれる醜さに粘りが少なくなってしまい、私としては少々物足りなさを感じました 桐野さんなら500ページ位のボリュームで、ダラダラと「これでもか!」って程に、登場人物たちの暗〜く重〜いエピソードを書き込んでも、絶対に面白かったと私は思うなまぁ、そんなに毎度長編ばかり書いてはいられないか

章によって主人公が替わり、それぞれの「嫉妬」が綴られるのですが、その深みが各話ほぼ均等な具合に描かれていて、一冊の本にした時に非常にバランスの良いものになっていました。これがプロの仕事ってことなのかな ただ、「ピーフラ会」のゆうべについては、新たなる登場人物が4人も登場してくる割には、サラっと終わってしまい残念だったわ。もっと修羅場化してほしかったな〜(私って悪趣味なのかな

いつも通りの桐野作品って感じですが、メイン主人公:川辺のお洒落な服装描写は今までにない綴りで、読んでいて楽しかったです
桐野さんの「重さ」が苦手な人には、オススメな一冊ですね



  ├ 桐野夏生 -
桐野夏生 『ポリティコン』

*あらすじ*
大正時代に東北に芸術家たちが創ったユートピア「唯腕村」。
1997年3月、村の後継者・東一は美少女マヤと出会った。
自らの王国に囚われた男と、国と国の狭間からこぼれ落ちた女は、愛し合い憎み合い、運命を交錯させる。
過疎、高齢化、農業破綻、食品偽装、脱北者、……東アジアの片隅の 日本をこの十数年間に襲った波は、いやおうなくふたりを呑み込んでいく。
今の日本のありのままの姿を、著者が5年の歳月をかけて描き尽くした渾身の長篇小説!

*感想*
さすが桐野夏生の長編読み応えがありました

桐野さんの作風といえば、「暗く深く人間と社会の闇(醜態)を女性主体に描く」というものが多く、私も桐野さんの「醜い女性を描かせたら天下一品」の筆力に惚れているのですが、本作では野心・生命力・動物的欲求に溢れる男性がほぼメインで描かれていることから、性別が女であろうと男であろうと関係なく、人間の本質に鋭く迫る欲望を巧みに表現する、著者の努力と才能に感動しました

今回舞台となるのは、「他人への無償の愛」「私有財産の禁止」「自給自足」を三原則としたユートピア、『唯腕村(イワン村)』であり、その村の創設から現在と将来に向けての展望の様子が、非常に現実的で引き込まれました。そしてその特殊な理念の元に成り立っている村であるからこそ起きる人間同士の軋轢は、ユートピア(理想郷)とは思えない醜さで、しかしだからこそ人間臭さを深く感じられ考えさせられることも多く大変良かったです!!

舞台は小さな村だけれども、抱える問題は現代社会の状況を反映したそのものなので、テーマが盛り沢山すぎると思う人もいるかもしれません。しかしそんな時は登場人物たちの言動だけに的を絞っても本書は絶対に楽しめると思います。高浪東一の長所とも短所ともとれるエゴの強さは、読んでいて多々苛立ちを感じますが、最後にはなぜか爽やかな気分にもさせてくれますよ〜








  ├ 桐野夏生 -
桐野夏生 『アンボス・ムンドス』


★★★☆☆


*あらすじ*
ブスで男にもてない女、ホームレス達の共有物になる女、不倫相手の自宅に乗り込む女など、醜い女達を描いた短編集。


*感想*
強烈な女性達が登場しまくる短編集でした。
さすが桐野さん、醜い女性の描き方を窮めてますね。登場する全ての女性達、それぞれ違った角度から完璧に醜く描ききっていたと思います。


特に私が惹かれた話は、ブスで男に持てない女が、過去に巻き込まれたある事件をキッカケに自分に自身を取り戻す話の「植林」。コンプレックスの塊ともいえる主人公(女)が、心の中で他人に「ボケ」だの「死ね」だの毒づく姿が怖い怖い。よっぽど日々の暮らしにストレスが溜まってるのね、ってかんじ。しかし同時に、その毒づきたくなる気持ちもわかったりするのよね…


表題作「アンボス・ムンドス」は、元小学校教諭である女性の独白形式で、物語が語られます。独白形式と、小学生達が登場する話だったことから、湊かなえの「告白」を思い出しました。「告白」も「アンボス・ムンドス」どちらも、それぞれ面白かったですけどね。


どれも面白い話でしたが、これらを長編で読むと、きっと気分が沈む内容ばかりだったので、短編集でよかったと思いました。



  ├ 桐野夏生 -
桐野夏生 『IN』


★★★☆☆


*あらすじ*
「恋愛における抹殺」というテーマで、「淫」という小説を書こうとしている鈴木タマキ。ここうでいう抹殺とは、死を意味するのではない。自分の都合で相手と関係を断ち相手の心を殺すことである。
その「淫」の主人公は、その昔、緑川未来男が書いた「無垢人」という小説の中に登場する「○子」という女性だ。
タマキは「○子」の正体を追いかけ、そして自身の恋愛相手、阿部青司との関係を鑑みる。


*感想*
桐野夏生らしいダークの世界が描かれているものの、「抹殺=相手の心を殺す」という、目には見えないものを表現しているために、終盤は精神的な面からいろいろ物事が語られ、読んでいて疲れました。
文章と世界観は、相変わらずグイグイ読ませてくれる桐野さんらしい筆圧があるのですが… とにかく終盤(結末)が、私にはいまいちでした。


前半・中盤は最高に面白かったです。特に第二章の「隠」と、第三章の「『無垢人』(緑川未来男作)」の章は、読むことを止められませんでした。
第二章の「隠」では、○子の疑いがある女性、「モーチャ」へのインタビューが描かれているのですが、モーチャだけの目線と口調で綴られる、回想とインタビューシーンは圧巻。面白いし、テンポがとても良い。そして第三章の「無垢人」は、是非この“無垢人”を全章読ませてくれと懇願したくなるリアルさでした。


抹殺だの、虚構だのと、いろいろ論じられるよりも、私はもっと単純な物語が読みたかったです。この結末を通して桐野さんが何を言いたかったのか、誰か私に解説してください。

 



  ├ 桐野夏生 -
桐野夏生 『東京島』


★★★☆☆


*あらすじ*
32人が流れ着いた太平洋の涯の島に、女は清子ひとりだけ。いつまで待っても、助けの船は来ず、いつしか皆は島をトウキョウ島と呼ぶようになる。果たして、ここは地獄か、楽園か?いつか脱出できるのか―。食欲と性欲と感情を剥き出しに、生にすがりつく人間たちの極限状態を容赦なく桐野夏生が描く!


*感想*
「人間の醜さ」を書かせたら、右に出るものはいないであろう桐野夏生。今回舞台となるのが無人島だということで、「これこそ人間を極限状態に追いやる設定だ!」と、かなり期待して読み始めました。


読後感想はというと… 普通に面白かったです。桐野作品に対するハードルが、私自身の中でかなり高くなってしまっているので「うわー!面白い!!」という感激はなかったのですが、いつも通りに安定感のある「醜い世界」が描かれ、期待は裏切られなかったと思いました。


しかし、残念な箇所も少々ありました。
まず、桐野さんは特に女性の醜さを書くのが上手いので、本書に登場する女性が清子1人だけ(後半ちょろっと他の女性も登場しますが)というのが、勿体なかったと思います。「無人島で32人中、女性は清子1人だけ」という設定だからこそ、清子の狡猾な思考や、汚い言葉遣いなどが冴えていたというのもわかるのですが、もう2・3人程度、主役級の女性達が登場して、「東京島の女王の座を奪い合う」とか、「より生活能力の高い男を虜にしようと策略を練り、女達の間で諍いが起こる」みたいな内容でも面白かったかも。


そして、登場人物が少し多目だったせいで、男性陣の“魅力と醜さ”が薄れてしまったと思います。31人も男性がいるのに、フューチャーされるのはごく数人。しかもなぜその人がフューチャーされる事になったのか、いまいち読者に伝わってこない。ワタナベは程好くイカレていて、存在感もあり良かったのですが、いまいちリーダーとしての魅力が感じられない森軍司や、オカルト路線に走ってしまった俊夫ことマンタ。ページ数の都合上なのか、その辺りの中途半端さが本書の詰めを甘くさせてしまった様に感じます。

そろそろ桐野さんも「醜い世界路線」を脱する頃でしょうかね・・・



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