読書が大好きな主婦の読書記録です☆
年間100作品読破を目指して日々読書に明け暮れ、本を通して感じた事や感動を忘れたくないので、記録として綴っています(*^。^*)
山田宗樹『きっと誰かが祈ってる』

*あらすじ*

親の病気や生活苦、失踪、虐待や育児放棄など様々な理由で実親と暮らせないゼロ歳から二歳までの子どもたちが生活する乳児院・双葉ハウス。ここでは、赤ちゃん一人ひとりの担当療育者を決めている。赤ちゃんに絶対的な安心感を与える“特別な大人”を、双葉ハウスでは“マザー”と呼び、赤ちゃんとマザーは擬似的な親子関係を築いていく。しかし、赤ちゃんが二歳を迎える前にその親子関係は終わることになる―子どもが物心つく前に。双葉ハウスに勤める島本温子は、保育士歴十二年。最初に担当した多喜が不幸になっているのではと思った温子はある行動に出る…。乳児院で奮闘する保育士を描く、あふれる愛の物語。

 

*感想*

本書のテーマは「乳児期・幼少期に“特別な大人”から愛を注がれて育まれる自己肯定感」と「子供の虐待」についてで、我が子の乳児期を思い出しつつ、涙ぐみながら読みました(:_;)

 

私は「母性ネタ」が好きなので本書の子供と触れ合うシーンに引き込まれたのですが、お若い読者の方や母性に興味がない方でも大丈夫です!主人公の島本温子が以前担当した子供の多喜ちゃんの消息を探し始め、そして多喜の窮地を救えるのか!?というドキドキ展開もあるので楽しめますよ!そして子供を育て守っていくのは親だけではなく、親戚・親族、乳児院の職員、児童相談所の職員、そして時には警察などの社会全体なのかもしれないな…と『きっと誰かが(あなたの幸せを)祈ってる』と強く感じた物語でした。

山田さんといえば『代体』『百年法』などの設定自体に強さがある作風のイメージだったのですが、本書のように身近で不確かで柔らかく温かい『子への愛』がテーマの作品もしっかり読ませてくれて、改めてすごい作家さんだと感動しました(:_;)

 

本書では多喜の窮地を救おうと奮闘してくれる大人たちが出てきますが、実際にはそう上手く話しが進む世の中ではないと思います。でも一人でも多くの子供が明るく正しい社会に大人として羽ばたけるように、私たち大人な努力しないといけないですね。

 

特別な大人に注がれた愛の分だけ、その子供も他者に愛を注げるようになる。

赤ちゃんは、ミルクだけを飲んでいるのではない。いっしょに、やさしい気持ちを飲んでいる。

 

きっと誰もが読後は優しい気持ちになれる作品だと思いますので、是非読んでみてほしいです。

あと、個人的には高校生くらいの読書感想文にも良い作品だと思いました!自分とは生い立ちが違う人がいることや、大人が子供を慈しむ気持ちを読んでどう感じたかを是非原稿用紙に綴ってもらいたいな(*^-^*)



  ├ 山田宗樹 -
染井為人『悪い夏』

 

*あらすじ*
37回横溝正史ミステリ大賞優秀賞受賞! 迫真の犯罪小説。

26歳の守は地方都市の社会福祉事務所で、生活保護受給者(ケース)のもとを回るケースワーカーとして働いていた。曲者ぞろいのケースを相手に忙殺されていたその夏、守は同僚が生活保護の打ち切りをチラつかせ、ケースである22歳の女性に肉体関係を迫っていることを知る。真相を確かめるために守は女性のもとを訪ねるが、やがて脅迫事件は形を変え、社会のドン底で暮らす人々を巻き込んでいく。生活保護を不正受給する小悪党、貧困にあえぐシングルマザー、東京進出をもくろむ地方ヤクザ。負のスパイラルは加速し、ついには凄絶な悲劇へと突き進む――。

 

*感想*

お・も・し・ろ・かったー!!

ワタクシですね、体調管理のために毎日深夜0時には寝るようにしているのですが、昨夜はもうどうしても本書を読み切りたくて夜中の1時半まで読んでしまいましたよ!眠気も吹っ飛ぶ疾走感と面白さでした!しかも読み終えて本作が著者の初の文芸書になるみたいで、その才能にびっくりしました(((o(*゚▽゚*)o)))

 

本書は「生活保護費の不正受給」を軸に、受給者に肉体関係を強要するケースワーカー、不正受給者から金を巻き上げてシノギにしようとするヤクザ、本当に生活に困窮していて生活保護を必要とする母子たちの群像劇となっています。

物語は序盤から肉体関係を強要するケースワーカーの件とヤクザが絡み始めるので、一気に最高速度で物語が展開され、あっという間に本書の虜になってしまいました!その疾走感たるや、まるでスタートから1.56秒で時速180キロに達するジェットコースター『ドドンパ』の様!しかし本書の凄さは、そんな最高速度で展開していく中にもしっかり生活保護制度の弱点や盲点、そして不正受給やクスリに手を出す人間の弱さなどを詳細に矛盾なく描いているところだと思いました。

 

一番の主人公だと思われる佐々木守が愛美に惚れていく様子、上手くいって自分に自信を持つ様子、そしてその後の壊れていく様子…描写と展開が秀逸すぎて、読んでいて本当に胸が痛かったです… そして守の変化により本当に貧困にあえぐ母子の運命が狂ってしまうという負のスパイラルで、「ここ(守)と、ここ(古川母子)をこう繋げるのかー!!」とただのいち読者である私が頭を抱えて苦悶してしまいました…(:_;)

 

本書はズバリ悲しい物語です。救いのない話が苦手な人には辛い物語かもしれません。しかし我が国の生活保護制度の在り方について考えさせられますし、本書ラストの主要登場人物たちが集結して大乱闘(?)を繰る広げるさまは、新人作家とは思えない筆力で見事なものなので、是非多くの方々に読んでもらいたいです!!

 

染井さん、楽しみながらも考えさせられる物語をありがとうございました!他の作品も絶対に読みますねー!!

 



★さ行 - その他の作家 -
畑野智美 『消えない月』

 

*あらすじ*
出版社に勤務する松原とマッサージ師のさくら、二人は、付き合いはじめ、やがて別れる。それで終わりのはずだった。婚約までした男と女の関係は、はじめから狂っていたのかもしれない。加害者と被害者、ふたつの視点から「ストーカー」に斬り込んだ、残酷にして無垢な衝撃作!!

 

*感想*

ストーカーによる殺人や事件が起きるたびに、「なんでそんなに執拗に追いかけるのだろうか…」「追いかければ追いかけるほど嫌われるのが判らないのだろうか?」と思っていたのですが、本書を読んで少しストーカーの思考がわかった気がしました。

注:思考はわかったけれど、気持ちはわかりませんからね!←ここ大切。

 

というのも、本書は、『交際している男性の抑圧的な言動に耐えられず別れを切り出したところ、その男性がストーカーになってしまった。』という話で、物語の視点がそれぞれ「ストーキングする側(男性)」「ストーキングされる側(女性)」両視点で描かれるからです。

 

もうその、ストーキングする側の視点が怖い怖い超怖い!別れを切り出した女性(さくら)が、本当に嫌がって距離を置こうとしているのに「さくらは誰かに脅されてそんなことを言わされているんだ」とか、全て自分の都合良いように解釈していて、誰が何を言おうが聞く耳持たずで、ストーキングする人は心の病なのだと戦慄する内容でした。

なので、結局解決方法も皆無に近いのですが、終盤で女性警察官がさくらに言った言葉が印象的でした

 

「相手に会い、自分の怒りをぶつけるために、ストーカーは努力します。警察よりも被害者よりも、努力します。運は平等に、努力する者の味方をします。それが間違った努力だとしても。運だけが彼に味方します。彼以上に努力して、運を河口さん(さくら)の味方にしてください」

 

なんだかこの文章だけを読むと「最後は運頼みかよー!」と捉えてしまいそうですが、そうではなくて、「ストーカーに屈してはいけない」という意味なのですよねきっと。

 

ストーカーする人の気持ちはわからないので、ラストの松原の独白は共感も同情の余地もなくただただ気持ちの悪い文章でしたが、世の中こういう変な人もいるものなのだという勉強になった作品でした。フィクションだとわかっていますが、読書の醍醐味である「自分とは違う人生」を垣間見られた作品でした。

 

是非皆さんも読んでみてくださいね〜〜♪

 

 

 

 

 

 

 



★は行 - その他の作家 -
秋吉理香子 『婚活中毒』

 

*あらすじ*

幸せになりたいすべての男女必読!
婚活にはミステリーがいっぱい!
婚活中の方も、そうでない方もお楽しみいただけます。
――秋吉理香子

 

「理想の男」………崖っぷち女が紹介された運命の相手は連続殺人犯?
「婚活マニュアル」…街コンで出会った美女の暴走に戸惑うマニュアル男は…
「リケジョの婚活」…本命男を絶対に落とす〈婚活ツール〉の中身とは?
「代理婚活」……息子の見合いで相手の母親に恋心を抱いた父親は…

 

*感想*

本書は『婚活』にまつわる、痛快ミステリー本でした☆ 『婚活』と一言で表しても、「結婚相談所」「街コン」「テレビのお見合い番組」「親による代理婚活」とバラエティー豊かな婚活設定になっていたので飽きることなかったですし、何より全話それぞれにトリックというか、“オチ”がある展開だったので非常に読み易く楽しい作品でした☆

 

全話面白かったので、それぞれに具体的な感想を書きたいところなのですが、今回は私が最も気に入った4編目の『代理婚活』についてのみ書かせてもらいますね。

 

何故私が『代理婚活』が良かったのかと言いますと、他の3編の主役は、実際にお見合い→結婚する【当事者】なのですが、代理婚活だけは主役が【結婚する者の親】となり、自分ではまだ味わったことのない状況と気持ちを堪能できたからです(笑)新型のラブストーリーとも言えるかも!

だってですね、35歳独身の息子のために親が代理婚活したはずだったのに、その息子の父親(益男)が、見合い相手の母親(久恵)に恋してしまう物語だったのですよ〜!

本来なら「いい歳したオヤジがっ!」とか「将来息子の義母になるかもしれない相手ですよ!?」と嫌悪感を抱くシチュエーションだと思うのに、益男さんのピュアな部分がなんだか可愛くて、そして息子は縁談を断ると決めているのに、益男が久恵との縁を断ちたくないばっかりに嘘を重ねてゆく姿にハラハラし、かなりドキドキさせられて良かったのです!

そして最後… どうやって「息子は本当は結婚する気がない」と女性側に伝えるかと悩み苦しんだのですが、意外な方法でサクっと解決してしまい… 婚活について詳しくは知らない人にはなかなか「してやられた!」感のあるもので良かったです!

 

ここからネタバレ↓↓

 

なんと女性側の家族は「結納金詐欺」ファミリーだったんです!つまり、結婚相談所側にとって『荒し』というやつですね。なので、益男側から縁談お断り連絡を女性側にすることはなく、物事がまるく収まって(破談になって)しまったという…久恵に惚れていた益男はちょっと可哀そうだったけれど、勉強になって良かったね!ついでにご自身の奥様を大切にしてくださいね!だわw

 

本書はあくまでエンタメ婚活本なので、本当に結婚相談所とかに登録する方への参考やマニュアルにはあまりならないかもしれないですが、息抜きにはなるかと思いますので、婚活に興味がある方もない方も、そして独身の子を持つ親御さんも、是非読んでみてくださいね〜♪

 



  ├ 秋吉理香子 -
東山彰良 『流』

 

 

 

*あらすじ*

1975年、台北。内戦で敗れ、台湾に渡った不死身の祖父は殺された。誰に、どんな理由で?無軌道に過ごす十七歳の葉秋生は、自らのルーツをたどる旅に出る。台湾から日本、そしてすべての答えが待つ大陸へ。激動の歴史に刻まれた一家の流浪と決断の軌跡をダイナミックに描く一大青春小説。直木賞受賞作。

 

*感想*

本書は2015年第153回直木賞作品なのですが、この153回に又吉直樹さん羽田圭介さんが芥川賞を受賞されていたことから、世間的には芥川賞の方が脚光を浴びていた記憶があります… いや、でも、東山さん!随分遅くなってしまいましたが、ちゃんと覚えていましたよ!この作品のことも、直木賞受賞のことも!3年遅くなってしまいましたが、直木賞受賞おめでとうございます(^^)/

 

そしてやっと読ませて頂きましたが… 

これは… これは…

とても良い作品でした!!(:_;)

台湾に住む葉秋生(イエ チョウシェン)の、17歳からの人生を描いた物語なのですが、戦争の歴史と家族の歴史に縛られ翻弄されながらも、懸命に生きてゆく姿が不器用で切なく、でもそこにとても人間味があって、まるで自分が葉秋生の人生に関わっているかの様に、一心に読みふけってしまいました。

 

本書をめくると、まず「主な登場人物」一覧が出てくるのですが、そこに記載されている名前が「葉秋生(イエ チョウシェン)」「趙戦雄(ジャオ ジャンション)」など日本人には馴染みのないもの、更には第1章から「蒋介石」「毛沢東」など、政治と戦争の話がグイグイ綴られるので、正直最初は本書を読み切れる自信がありませんでした(>_<) しかも暴力シーンも多々あるしで… 

でもね、東山さんの文章がとても読みやすくて、シリアスな場面はとことんシリアスなのに、ちょっと息を抜けるようなシーンでは「クスっ」となるような言い回しもあったりして、気が付いたらどっぷりと本書の世界に入り込んでいました。東山さんの文章と構成は「明らかに(ウケや涙を)狙っている感じがないのに、笑えたり涙が出たり感情を揺さぶられて、言葉を操るプロ、そのものでした。

 

私が感動した文章は幾つかありましたが特に

P.220「人には成長しなければならない部分と、どうしたって成長できない部分と、成長してはいけない部分があると思う。この混合の比率が人格である」

 

P.352「わたしたちは魚なのだ。だから、どんなに泣いても、涙なんか見えるはずもない。彼女の涙は流れ落ちる間もなく、水に洗われてゆく。それをわたしはずっと見て見ぬふりをしてきたのだ。」

 

この2個所でした。

 

そして“これは東山マジックなのでは!?”と思ったのですが、

後者(P.352)の魚の方を読むと、本書冒頭に綴られている

 

魚が言いました…わたしは水のなかで暮らしているのだから

あなたにはわたしの涙が見えません

王璇「魚問」より

 

の意味がなんとなく理解できるようになり、つまりそれは「大人へと成長することにより、自分の本当の感情を表に出さなくなる(水の中で泣いて、相手に涙を見せなくなる)」

でもそれは前者(P.220)で綴られた「成長しなければならない部分」だったのですか?「成長してはいけない部分」だったのではないですか?

 

と、私の中ではリンクしていったのです。

どうだろう… 考えすぎかな…?

でも、そう考えてしまう程に、東山さんの綴る文章はエモーショナルで、全ての文章に意味があった様に感じました。

 

台湾と中国の歴史に疎い私でもとても楽しめた作品なので、私と同じく歴史をよくは知らない方にも是非読んで頂きたいし、歴史に興味がある人ならもっと楽しめると思うので是非読んでみてほしいです〜☆

台湾・中国名を覚えるのは大変だと思うけどファイトだよ〜!



★は行 - その他の作家 -
お久しぶりでございます♪

いつも当ブログをご覧頂き、誠にありがとうございますm(__)m

今月(2018年10月)は、数年ぶりに1冊しか感想文をアップできずに申し訳ございません(:_;)

ちょっと今月は母親業が立て込んでいまして、なかなか読書時間を確保できなかったのです…

そしてそんな時に、いつも本の画像とリンクを張らせてもらっているAmazonさんから「アソシエイト契約終了」との通知まで来てしまいまして、てんやわんや💦していました。

 

先ほどなんとかアソシエイトの再登録もしましたし、やっぱり本が好きでウズウズしているので、このブログを地味にでも続けていきたいと思います!更新ペースゆっくり目だけれど、また是非覗いてくださいね☆

 

みわゆ〜

 



★みわゆ〜の日常 -
恩田陸 『木漏れ日に泳ぐ魚』

 

 

*あらすじ*

舞台は、アパートの一室。別々の道を歩むことが決まった男女が最後の夜を徹し語り合う。
初夏の風、木々の匂い、大きな柱時計、そしてあの男の後ろ姿-――。
共有した過去の風景に少しずつ違和感が混じり始め、犧埜紊量覘瓩貿嗣な心理戦が繰り広げられる。かつての恋人は、ひょっとして殺人犯なのか?
過去をめぐる物語は次々と意外な事実を明らかにし、朝の光とともに訪れる真実とは――。
互いの腹を探り合うスリリングな興奮と、好きなのに疑ってしまう恋愛の切なさに一気読み必至の、傑作心理サスペンス。

 

*感想*

久々に恩田さんの作品でも読もうかな〜 と思って図書館で本書を手に取りました。なんど恩田作品を読むのは10年ぶり!!しかも王道『夜のピクニック』以来!

本書のタイトルはなんだか不思議なロマンティックさがあるし、裏表紙のあらすじを読むと「傑作心理サスペンス」というとても面白そうな響きの文章もあるしね!

ってことで読んだのですが…

 

残念ながら、これまた私の好みではない作品でしたーー(´;ω;`)ウゥゥ

 

とあるカップルが別れを決めて、最後の夜を2人きりで飲み明かすのですが、昔2人で登った山の山岳ガイドが死亡した理由は、この人が殺害したからなのでは…?とお互いがお互いを疑う物語なのです。そしてその疑いからそれぞれの過去の記憶を引き出してゆき、2人の本当の関係性が分かっていき、そして「恋」だと思っていた心情にも変化が…

という物語だったのですが…

 

度々私がこのブログでも「苦手」だと告げている、「妄想」「推測」で物語が進んでいくスタイルだったので読むのが辛かったのですΣ( ̄ロ ̄lll) とにかく「証拠がない」ので「説得力がない」。そういう物語でした。

カップルのお話なので、恋愛小説として読むならば読めなくもなかったとは思います。例えば物語終盤に綴られる

 

すべてが生の選択肢であるのだとすると、人を好きになるというのはどういうことなのだろうか。単に子孫を残すという欲求のためならば、欲望だけがあれば済むはずなのに。

 

など、一見当然のようだけれど、忘れかけていることを思い出させてくれる素敵な文章もありましたから。。。

 

ちょっと私は「心理サスペンス」を期待しすぎてしまっていたのかも。

没頭できなかったので薄〜い感想文ですみません。こんな感想では興味持てないかもしれませんが、良かったら読んでみてくださいね!

 

 

 



  ├ 恩田陸 -
天童荒太 『ペインレス』

 

*あらすじ*

診察したいんです、あなたのセックスを――

若き美貌の麻酔科医・野宮万浬のペインクリニックに現われた貴井森悟は、彼女にとって舌なめずりしたいような実験材料だった。
森悟はビジネスの最前線である中東の紛争地帯で爆弾テロに遭い、痛覚を失って帰国した。万浬のセックスを伴う「診察」が繰り返される中で、森悟は、紛争地帯で遭遇した事件の詳細を語る。万浬は、実は心に痛みを覚えたことのない女性だった。彼女がそうなったのは、トラウマがそうさせたわけではない。どうやらそれはDNAのためであるらしかった。
他人の痛みを知ることによって、自分を知ろうとする万浬の生い立ちとは…

 

*感想*

ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと最初に弁解させてくださいねっ!

私は本書がこんなにもセックスが絡む物語とは知らないで読んだんですよー!なのであらすじ冒頭の『診察したいんです、あなたのセックスを―』なんて文言も知らずに本書を手に取ったんです(;’’)

本書は間違いなく18禁の物語だったと思います。あ〜〜〜私の大好きだった『家族狩り』『永遠の仔』の天童荒太はどこへ行ってしまったのぉーー(´;ω;`)ウゥゥ 2009年に読んだ『悼む人』も随分とスピリチュアルな世界になってしまって、「天童荒太はとうとう悟りを開いたか」と思っていたけれど、本書はその追い打ちをかけるような「精神的・肉体的痛みの有り方における人類の進化と将来像について」みたいなペイン外来の医者の論文になっちゃいそうな内容で、そんなの私は文芸書に求めていなーい!という内容でした(:_;)

 

と、随分感情的に感想を書きなぐってしまいましたが、ちょっと落ち着いて概要と感想を書きますね

 

本書の主人公は、若き美貌の医師・野宮万浬。万浬は肉体的な痛みは感じるが、精神的な痛みを感じずに生きてきたため、他人の「痛み」というものにとても興味があった。そんな折に恩師を通して紹介されたのが、事故で無痛病となった男性・森悟だった。万浬は医師として、女として森悟の痛みを知っていこうとするが…

という内容でした。

それでですね、ただ単純に痛みを知ろうとするには、尖ったもので肉体を突けば済む話なのですが、万浬はそれだけではなく、セックスを通しての肉体的と精神的の痛みと快感を探っていこうとするのです。しかも自分にとって有益な情報や人脈を確保するためにも、どんな男とも寝るから、まーエロシーンが多いこと多いこと(;’’) そんな最中にもホルモンの話や理論的な話が入ってくるので、だたの官能小説ではないことはわかりますよ…

例えば

『わたしが欲しい、という欲望は…女を自分のモノにするという、所有欲や征服欲と結びついた精神的な悦び…あるいは、他者の性器内に射精するという、肉体的かつ本能的な達成感や解放感を求める想いから、発しているのでしょうか』

とかね。

でも結局そういう理論や屁理屈を捏ね繰り回しては性的シーンが何度も出てくることに、私は正直嫌悪感を抱いてしまいました。だって、ヤってもヤっても結局万浬の真意や心に痛みを感じない由来とか、未来が見えてこないのだものっ!!

 

凄い本だったとは思います。痛みがどれだけ生命の危機から人体を守ってきたのか、痛みを通して他者と共感したり、ときにはお笑いとしてのツールになるのか、たくさんの事を学べたと思います。

でも万浬の美貌と身体を武器にして男たちから色々なものを引き出すところ、森悟が外国で幼女を抱くところ、そして他人の心をめちゃくちゃに壊し精神科送りにさせる万浬のやり口、許せないことが多すぎました。

身体と心と性をこんなに切り離して考えて良いものだとは私は思えない。

 

ちょっと厳しい書き方になってしまいましたが、どうやら天童荒太ワールドは私には理解できない境地に入ってしまったようです…

本書をもって天童作品は卒業しようと心に決めました。

天童さん、天童ファンの方、すみません。でもこれは個人の趣味嗜好の問題なので、こういう世界観がお好きな方は私の意見など気にせずに読んで、読書を楽しんでくださいね!

 

 

 



  ├ 天童荒太 -
中山七里 『護られなかった者たちへ』

 

 

*あらすじ*

仙台市の福祉保健事務所課長・三雲忠勝が、手足や口の自由を奪われた状態の餓死死体で発見された。三雲は公私ともに人格者として知られ怨恨が理由とは考えにくい。一方、物盗りによる犯行の可能性も低く、捜査は暗礁に乗り上げる。三雲の死体発見から遡ること数日、一人の模範囚が出所していた。男は過去に起きたある出来事の関係者を追っている。男の目的は何か?なぜ、三雲はこんな無残な殺され方をしたのか?罪と罰、正義が交錯した先に導き出されるのは、切なすぎる真実―。

 

*感想*

「護られなかった者」とは、一体何から護られなかったのか…?と考えながら本書を読み始めました。

その答えは案外早く本書中で解ってきまして

・東日本大震災から護られなかった

・震災復興支援から護られなかった

・生活保護受給制度から護られなかった

がベースとなる物語でした。

 

特に生活保護受給制度問題を核にした物語だと序盤でわかったので、高齢化社会問題・貧富の格差問題・生活保護費不正受給問題・政府による生活保護費削減問題と深く絡めた社会派ミステリーを大いに期待したのですが… 実際にはそこまで深い物語ではありませんでした(;’’) というか、350ページ程度では収まらない問題なのですよね…これらは…

たしかに本文中に良い言葉がたくさんありました

 

2006年に厚労省が全国の福祉保健事務所の所長を集めて会議をし、生活保護利用率の低い自治体を「優秀」と評価し、その翌年に「優秀」と評価された北九州市から『おにぎりを食べたい』と書き残して餓死した男性のケースが明らかになった事例とともに

 

P180.

真っ当な行政機関という定義は何なのでしょうか。国民のためにはどんな無理難題でも抱え込む組織ですか。それとも省庁の指示通りに運営して行政に破綻を来たさない組織ですか

 

と問いかけてくるあたりは特に良かったです。これは私たちが忘れてはいけない事件だったと思います。

 

しかし物語は、上記と似たようなケースで大切な身内とも呼べるお婆さんを亡くした青年の、生活保護申請を却下した公務員への復讐物語になってしまうのです…

 

うーん… ミステリーとしは最後にちょっと意外というか盲点だった結末が用意されているので楽しめるかとは思うのですが、社会福祉の壮大な土俵で描いていた物語にしてはこじんまりした終焉だったかな。。。すっかり私も騙されてしまったのですがね(笑)

 

犯人の国の制度から見放された怒り、公務員の職務の理想と現実、そして震災という悲劇、色々な思いが交錯しすぎてしまった作品でした。

でもこれらの問題も国民全員で考えていかないといけない問題なので、多くの人に読んでもらいたい作品だと思います。

 

 



  ├ 中山七里 -
深木章子 『消えた断章』

*あらすじ*

君原樹来は推理作家を目指す法学部の四年生。あるとき、同じ大学に通う妹・麻亜知の友人、葛木夕夏があるトラブルを抱えているといい、元C県警捜査一課の刑事であった樹来の祖父に相談しに行くことに。夕夏は十年前、実の叔父に誘拐されたことがあった。ただ、記憶を失った時間があっただけで被害はなく、当時は身内のトラブルと片づけられたのだが、最近になって警視庁が再捜査に乗り出しているという。同じ十年前、同じく誘拐された男児の白骨遺体が最近発見されたことが関係しているようだ。当の叔父は行方不明になり、裕福な創業者一家だった葛木家は、その後みるみるうちに崩壊していったのだが―

 

*感想*

深木さんにしては珍しい(?)本格ミステリー作品でした。

 

うーん… 私はあまり本格ミステリーが好みではないので(犯人捕獲へのヒントが著者の采配で小出しにされるのが苦手)本書もそんなに楽しめなかったのが正直なところで…(^^;)

でも、ミステリー好きには良い作品だと思います!

 

本書の良いところ!それはまず登場人物達のお名前かも

主人公の男の子は君原樹来(きみはらじゅらい)、その妹は麻亜知(まあち)という名前で、誕生月のJulyMarchからきているそうです。なんとまぁ凄いキラキラネーム(笑)!

本格ミステリーというと堅苦しイメージが私にはあるので、このキラキラネーム登場に和みました♪(高齢層には不評かな?w

 

そして内容はというと、記憶を断片的に失くした少女(麻亜知の友人=夕夏)が、約10年前に起きて最近白骨遺体で見つかった少年の事件を「自分が殺したのかもしれない」と告げ、記憶がない彼女はその記憶がない間何をしてしまったのか… そして少年の遺体の事件とどう交わるのか… 

という物語でした。

 

崩壊した夕夏の家族と、白骨遺体の少年の両親も失踪。一体この2家族に何があったのか?が事件の全貌を暴く鍵のなるのですが、その推理の途中に何度も出てくるのが、夕夏の叔父である弘幸叔父さんが「女性にモテるタイプだった」というところから、夕夏の母親とじつはデキてたとか、白骨遺体の少年の母親とも男女の仲だったのではとか、下衆の痴情のもつれ論が何度も登場するのにはガッカリしてしまいました…

 

 

で、結局結論はですね

↓ネタバレ注意↓

↓ネタバレ注意↓

 

葛木夫婦と小野原夫婦は、偽装誘拐の共謀者だった。

葛木夫婦は弘幸叔父を殺害してしまった隠蔽、小野原夫婦は金銭的窮地で大金を親からせしめるため交換誘拐を企てたのだが、小野原迪くんを葛木家が誘拐した時に思わぬ事態(小野原両親が警察に通報)されたことにより、葛木夫婦は迪くんを本当に殺害せざる負えなくなり、その後小野原夫婦も殺害(小野原父と息子は山に埋めて、妻は葛木美希の身代わりとして顔を潰し池で自殺したとみせかけた)。

そして今回、迪くんの遺体発見を機に、葛木夕夏の誘拐事件の真犯人が小野原晃司だったということが警察にバレないように、葛木一家が色々工作した事件だった。

 

ということでした。ほんとざっくりの説明ですみません

 

大切な人を守るためとはいえ、10年も罪と秘密を背負っていきている夕夏は辛かったのではないかと思いました。あぁでもこういうミステリーには感情は不要なのかな?終わり方も思ったよりもさっぱりでしたしね。

 

深木さんもこういう作品書くのね〜 と新発見の作品でした!

 



  ├ 深木章子 -
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