読書が大好きな主婦の読書記録です☆
年間100作品読破を目指して日々読書に明け暮れ、本を通して感じた事や感動を忘れたくないので、記録として綴っています(*^。^*)
恩田陸 『木漏れ日に泳ぐ魚』

 

 

*あらすじ*

舞台は、アパートの一室。別々の道を歩むことが決まった男女が最後の夜を徹し語り合う。
初夏の風、木々の匂い、大きな柱時計、そしてあの男の後ろ姿-――。
共有した過去の風景に少しずつ違和感が混じり始め、犧埜紊量覘瓩貿嗣な心理戦が繰り広げられる。かつての恋人は、ひょっとして殺人犯なのか?
過去をめぐる物語は次々と意外な事実を明らかにし、朝の光とともに訪れる真実とは――。
互いの腹を探り合うスリリングな興奮と、好きなのに疑ってしまう恋愛の切なさに一気読み必至の、傑作心理サスペンス。

 

*感想*

久々に恩田さんの作品でも読もうかな〜 と思って図書館で本書を手に取りました。なんど恩田作品を読むのは10年ぶり!!しかも王道『夜のピクニック』以来!

本書のタイトルはなんだか不思議なロマンティックさがあるし、裏表紙のあらすじを読むと「傑作心理サスペンス」というとても面白そうな響きの文章もあるしね!

ってことで読んだのですが…

 

残念ながら、これまた私の好みではない作品でしたーー(´;ω;`)ウゥゥ

 

とあるカップルが別れを決めて、最後の夜を2人きりで飲み明かすのですが、昔2人で登った山の山岳ガイドが死亡した理由は、この人が殺害したからなのでは…?とお互いがお互いを疑う物語なのです。そしてその疑いからそれぞれの過去の記憶を引き出してゆき、2人の本当の関係性が分かっていき、そして「恋」だと思っていた心情にも変化が…

という物語だったのですが…

 

度々私がこのブログでも「苦手」だと告げている、「妄想」「推測」で物語が進んでいくスタイルだったので読むのが辛かったのですΣ( ̄ロ ̄lll) とにかく「証拠がない」ので「説得力がない」。そういう物語でした。

カップルのお話なので、恋愛小説として読むならば読めなくもなかったとは思います。例えば物語終盤に綴られる

 

すべてが生の選択肢であるのだとすると、人を好きになるというのはどういうことなのだろうか。単に子孫を残すという欲求のためならば、欲望だけがあれば済むはずなのに。

 

など、一見当然のようだけれど、忘れかけていることを思い出させてくれる素敵な文章もありましたから。。。

 

ちょっと私は「心理サスペンス」を期待しすぎてしまっていたのかも。

没頭できなかったので薄〜い感想文ですみません。こんな感想では興味持てないかもしれませんが、良かったら読んでみてくださいね!

 

 

 



  ├ 恩田陸 -
天童荒太 『ペインレス』

 

*あらすじ*

診察したいんです、あなたのセックスを――

若き美貌の麻酔科医・野宮万浬のペインクリニックに現われた貴井森悟は、彼女にとって舌なめずりしたいような実験材料だった。
森悟はビジネスの最前線である中東の紛争地帯で爆弾テロに遭い、痛覚を失って帰国した。万浬のセックスを伴う「診察」が繰り返される中で、森悟は、紛争地帯で遭遇した事件の詳細を語る。万浬は、実は心に痛みを覚えたことのない女性だった。彼女がそうなったのは、トラウマがそうさせたわけではない。どうやらそれはDNAのためであるらしかった。
他人の痛みを知ることによって、自分を知ろうとする万浬の生い立ちとは…

 

*感想*

ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと最初に弁解させてくださいねっ!

私は本書がこんなにもセックスが絡む物語とは知らないで読んだんですよー!なのであらすじ冒頭の『診察したいんです、あなたのセックスを―』なんて文言も知らずに本書を手に取ったんです(;’’)

本書は間違いなく18禁の物語だったと思います。あ〜〜〜私の大好きだった『家族狩り』『永遠の仔』の天童荒太はどこへ行ってしまったのぉーー(´;ω;`)ウゥゥ 2009年に読んだ『悼む人』も随分とスピリチュアルな世界になってしまって、「天童荒太はとうとう悟りを開いたか」と思っていたけれど、本書はその追い打ちをかけるような「精神的・肉体的痛みの有り方における人類の進化と将来像について」みたいなペイン外来の医者の論文になっちゃいそうな内容で、そんなの私は文芸書に求めていなーい!という内容でした(:_;)

 

と、随分感情的に感想を書きなぐってしまいましたが、ちょっと落ち着いて概要と感想を書きますね

 

本書の主人公は、若き美貌の医師・野宮万浬。万浬は肉体的な痛みは感じるが、精神的な痛みを感じずに生きてきたため、他人の「痛み」というものにとても興味があった。そんな折に恩師を通して紹介されたのが、事故で無痛病となった男性・森悟だった。万浬は医師として、女として森悟の痛みを知っていこうとするが…

という内容でした。

それでですね、ただ単純に痛みを知ろうとするには、尖ったもので肉体を突けば済む話なのですが、万浬はそれだけではなく、セックスを通しての肉体的と精神的の痛みと快感を探っていこうとするのです。しかも自分にとって有益な情報や人脈を確保するためにも、どんな男とも寝るから、まーエロシーンが多いこと多いこと(;’’) そんな最中にもホルモンの話や理論的な話が入ってくるので、だたの官能小説ではないことはわかりますよ…

例えば

『わたしが欲しい、という欲望は…女を自分のモノにするという、所有欲や征服欲と結びついた精神的な悦び…あるいは、他者の性器内に射精するという、肉体的かつ本能的な達成感や解放感を求める想いから、発しているのでしょうか』

とかね。

でも結局そういう理論や屁理屈を捏ね繰り回しては性的シーンが何度も出てくることに、私は正直嫌悪感を抱いてしまいました。だって、ヤってもヤっても結局万浬の真意や心に痛みを感じない由来とか、未来が見えてこないのだものっ!!

 

凄い本だったとは思います。痛みがどれだけ生命の危機から人体を守ってきたのか、痛みを通して他者と共感したり、ときにはお笑いとしてのツールになるのか、たくさんの事を学べたと思います。

でも万浬の美貌と身体を武器にして男たちから色々なものを引き出すところ、森悟が外国で幼女を抱くところ、そして他人の心をめちゃくちゃに壊し精神科送りにさせる万浬のやり口、許せないことが多すぎました。

身体と心と性をこんなに切り離して考えて良いものだとは私は思えない。

 

ちょっと厳しい書き方になってしまいましたが、どうやら天童荒太ワールドは私には理解できない境地に入ってしまったようです…

本書をもって天童作品は卒業しようと心に決めました。

天童さん、天童ファンの方、すみません。でもこれは個人の趣味嗜好の問題なので、こういう世界観がお好きな方は私の意見など気にせずに読んで、読書を楽しんでくださいね!

 

 

 



  ├ 天童荒太 -
中山七里 『護られなかった者たちへ』

 

 

*あらすじ*

仙台市の福祉保健事務所課長・三雲忠勝が、手足や口の自由を奪われた状態の餓死死体で発見された。三雲は公私ともに人格者として知られ怨恨が理由とは考えにくい。一方、物盗りによる犯行の可能性も低く、捜査は暗礁に乗り上げる。三雲の死体発見から遡ること数日、一人の模範囚が出所していた。男は過去に起きたある出来事の関係者を追っている。男の目的は何か?なぜ、三雲はこんな無残な殺され方をしたのか?罪と罰、正義が交錯した先に導き出されるのは、切なすぎる真実―。

 

*感想*

「護られなかった者」とは、一体何から護られなかったのか…?と考えながら本書を読み始めました。

その答えは案外早く本書中で解ってきまして

・東日本大震災から護られなかった

・震災復興支援から護られなかった

・生活保護受給制度から護られなかった

がベースとなる物語でした。

 

特に生活保護受給制度問題を核にした物語だと序盤でわかったので、高齢化社会問題・貧富の格差問題・生活保護費不正受給問題・政府による生活保護費削減問題と深く絡めた社会派ミステリーを大いに期待したのですが… 実際にはそこまで深い物語ではありませんでした(;’’) というか、350ページ程度では収まらない問題なのですよね…これらは…

たしかに本文中に良い言葉がたくさんありました

 

2006年に厚労省が全国の福祉保健事務所の所長を集めて会議をし、生活保護利用率の低い自治体を「優秀」と評価し、その翌年に「優秀」と評価された北九州市から『おにぎりを食べたい』と書き残して餓死した男性のケースが明らかになった事例とともに

 

P180.

真っ当な行政機関という定義は何なのでしょうか。国民のためにはどんな無理難題でも抱え込む組織ですか。それとも省庁の指示通りに運営して行政に破綻を来たさない組織ですか

 

と問いかけてくるあたりは特に良かったです。これは私たちが忘れてはいけない事件だったと思います。

 

しかし物語は、上記と似たようなケースで大切な身内とも呼べるお婆さんを亡くした青年の、生活保護申請を却下した公務員への復讐物語になってしまうのです…

 

うーん… ミステリーとしは最後にちょっと意外というか盲点だった結末が用意されているので楽しめるかとは思うのですが、社会福祉の壮大な土俵で描いていた物語にしてはこじんまりした終焉だったかな。。。すっかり私も騙されてしまったのですがね(笑)

 

犯人の国の制度から見放された怒り、公務員の職務の理想と現実、そして震災という悲劇、色々な思いが交錯しすぎてしまった作品でした。

でもこれらの問題も国民全員で考えていかないといけない問題なので、多くの人に読んでもらいたい作品だと思います。

 

 



  ├ 中山七里 -
深木章子 『消えた断章』

*あらすじ*

君原樹来は推理作家を目指す法学部の四年生。あるとき、同じ大学に通う妹・麻亜知の友人、葛木夕夏があるトラブルを抱えているといい、元C県警捜査一課の刑事であった樹来の祖父に相談しに行くことに。夕夏は十年前、実の叔父に誘拐されたことがあった。ただ、記憶を失った時間があっただけで被害はなく、当時は身内のトラブルと片づけられたのだが、最近になって警視庁が再捜査に乗り出しているという。同じ十年前、同じく誘拐された男児の白骨遺体が最近発見されたことが関係しているようだ。当の叔父は行方不明になり、裕福な創業者一家だった葛木家は、その後みるみるうちに崩壊していったのだが―

 

*感想*

深木さんにしては珍しい(?)本格ミステリー作品でした。

 

うーん… 私はあまり本格ミステリーが好みではないので(犯人捕獲へのヒントが著者の采配で小出しにされるのが苦手)本書もそんなに楽しめなかったのが正直なところで…(^^;)

でも、ミステリー好きには良い作品だと思います!

 

本書の良いところ!それはまず登場人物達のお名前かも

主人公の男の子は君原樹来(きみはらじゅらい)、その妹は麻亜知(まあち)という名前で、誕生月のJulyMarchからきているそうです。なんとまぁ凄いキラキラネーム(笑)!

本格ミステリーというと堅苦しイメージが私にはあるので、このキラキラネーム登場に和みました♪(高齢層には不評かな?w

 

そして内容はというと、記憶を断片的に失くした少女(麻亜知の友人=夕夏)が、約10年前に起きて最近白骨遺体で見つかった少年の事件を「自分が殺したのかもしれない」と告げ、記憶がない彼女はその記憶がない間何をしてしまったのか… そして少年の遺体の事件とどう交わるのか… 

という物語でした。

 

崩壊した夕夏の家族と、白骨遺体の少年の両親も失踪。一体この2家族に何があったのか?が事件の全貌を暴く鍵のなるのですが、その推理の途中に何度も出てくるのが、夕夏の叔父である弘幸叔父さんが「女性にモテるタイプだった」というところから、夕夏の母親とじつはデキてたとか、白骨遺体の少年の母親とも男女の仲だったのではとか、下衆の痴情のもつれ論が何度も登場するのにはガッカリしてしまいました…

 

 

で、結局結論はですね

↓ネタバレ注意↓

↓ネタバレ注意↓

 

葛木夫婦と小野原夫婦は、偽装誘拐の共謀者だった。

葛木夫婦は弘幸叔父を殺害してしまった隠蔽、小野原夫婦は金銭的窮地で大金を親からせしめるため交換誘拐を企てたのだが、小野原迪くんを葛木家が誘拐した時に思わぬ事態(小野原両親が警察に通報)されたことにより、葛木夫婦は迪くんを本当に殺害せざる負えなくなり、その後小野原夫婦も殺害(小野原父と息子は山に埋めて、妻は葛木美希の身代わりとして顔を潰し池で自殺したとみせかけた)。

そして今回、迪くんの遺体発見を機に、葛木夕夏の誘拐事件の真犯人が小野原晃司だったということが警察にバレないように、葛木一家が色々工作した事件だった。

 

ということでした。ほんとざっくりの説明ですみません

 

大切な人を守るためとはいえ、10年も罪と秘密を背負っていきている夕夏は辛かったのではないかと思いました。あぁでもこういうミステリーには感情は不要なのかな?終わり方も思ったよりもさっぱりでしたしね。

 

深木さんもこういう作品書くのね〜 と新発見の作品でした!

 



  ├ 深木章子 -
村山由佳 『風は西から』

 

 

*あらすじ*

過労自死———。決して、彼が弱かったのではない。では、なぜ、彼は死ななければならなかったのか?
答えを探して、大企業を相手にした戦いが始まる。
小さな人間が秘めている強さを描く、直木賞作家のノンストップ・エンターテインメント!

大手居酒屋チェーン「山背」に就職し、繁盛店の店長となり、張り切って働いていた健介が、突然自ら命を絶ってしまった。大手食品メーカー「銀のさじ」に務める恋人の千秋は、自分を責めた――なぜ、彼の辛さを分かってあげられなかったのか。悲しみにくれながらも、健介の自殺は「労災」ではないのか、その真相を突き止めることが健介のために、自分ができることではないか、と千秋は気づく。そして、やはり、息子の死の真相を知りたいと願う健介の両親と共に、大企業を相手に戦うことを誓う。小さな人間が秘めている「強さ」を描く、社会派エンターテインメント。

 

*感想*

好きな作家さんの一人である村山由佳さんの最新作ということで、事前情報なく読み始めたら、あれよあれよという間に主人公の恋人(健介)が仕事で追い込まれ、そして自ら命を絶ってしまい、「うぇぇぇぇぇぇぇぇぇΣ( ̄ロ ̄lll)!!!」と叫んでしまいました(>_<)

 

同時に、健介が職場で追い込まれていく経緯にずーっと既視感があった理由もその時にわかりました。

これは2008年に起きた、「和民」の過労自殺がモチーフだったようです。

もちろん「この作品はフィクションです」の文言が巻末に記されていますが、健介が休日返上で働かされて追い込まれていくエピソードは「和民」の事件の時に明らかになった実態そのままの所が多かったです。

 

*参考に和民の過労自死の時に明らかになった、当時の和民の労働環境はこちら↓

1)研修会への強制的な参加や課題リポート作成のための時間を、労働時間と認めなかった。

2)研修等に必要な渡邉美樹氏の書籍代金を、給料から天引きしていた。

3)研修では、渡邉美樹氏の理念集を丸暗記させ、満点を取るまでテストが繰り返された。

4)休日に、ボランティア名目で研修を行っていた。当然、その研修には、賃金が支払われていなかった。

5)法定の休憩時間を与えていなかった。

など。

 

その後、どうやってご遺族と和民が和解にまで至ったのかの経緯はわからないのですが、本書では健介の死後、勤務していた会社「山背」の不誠実な対応が続き、それは本当に許せないもので、腹立たしく読みました(-_-) 

 

過労自死や、いじめによる自死が起きると、「死ぬ前に会社や学校を辞めればよかったのに」と簡単に口にする人がいますが、そういう判断すら正常にできなくなることが、過労でありいじめなのですよね。本書ではその辺りの「追い込まれざる負えない状況」が前半で書かれていたため、人の弱さと、企業の狡さ、そして遺族の強さを熱く感じられる良い小説でした。

 

特に印象的だったのが、

P87. 健介が異動になった店舗で、店長の大嶋が辞めていった人を熾烈なまでの人格否定をすることに「何も店長が率先して彼らを煽らなくても(悪口を言うように煽らなくても)」と健介が進言したら

「ばか、必要だからやってんだよ。辞めてったやつのことを、今いるやつらに羨ましいとか賢いとか思わせたら終わりなんだ。みんな後に続いて辞めちゃって、使えるやつがいなくなっちまう。だからこそまだ残っているやつの頭に『辞めることは無責任で傍迷惑で最低最悪の選択なんだ』ってとことん刷り込んでおかなきゃならないのさ」

 

の返しですよーー!

こ、こ、怖い(>_<)

こうやって、人は追い込まれていくのですね…。

 

「山背」を相手に戦う、健介の恋人の千秋さん、かっこ良かったな〜〜

山背から、千秋の会社「銀のさじ」に圧力をかけられた時にも屈しなかったあの姿勢、自分の仕事と生き方に誇りをもっているのが、とてもよく伝わってきました。

ちょっと言葉にするのは難しいのだけれど、会社に潰されるまで働いた健介、会社に圧力をかけられても働き続けた千秋。この二人の生き方から、会社で働くことの意味や、会社との付き合い方を考えさせられました。仕事に責任を持つことはとっても大切なことだけれど、それが「生きることの尊厳」を害していないかを見直させてくれる作品だったと思います。

健介の恋人をフルタイムで働く女性という設定にした村山さん、さすがですね。これが無職の女性、もしくは恋人がいない設定だったら、これはただの「山背批判小説」で終わっていたと思います。そうではなく、働くことの良さも千秋を通して描いていた素晴らしい設定でした。

 

今から社会に出る方は読んでおくと仕事への向き合い方の勉強になる作品だと思いますよ〜〜♪

もちろんもう社会でバリバリ働いている方も楽しめるので是非読んでみてくださいね〜〜♪

 



  ├ 村山由佳 -
薬丸岳 『刑事の怒り』

*あらすじ*

被害者と加害者、その家族たちのやむにやまれぬ“想い”をみつめてきた刑事・夏目信人が出会った4つの事件。
年金不正受給、性犯罪、外国人労働、介護。
社会の歪みが生み出す不平等や、やり場のない虚しさを抱えつつも懸命に前を向く人々。彼らを理不尽に踏みにじる凶悪な犯人を前に、常に温かみに満ちていた彼のまなざしが悲しき“怒り”に燃えたとき、胸をこみ上げる激情に我々は思わず言葉を失う――。
刑事・夏目信人シリーズ最新作!

 

*感想*

『刑事のまなざし』『その鏡は嘘をつく』『刑事の約束』と続く、刑事・夏目信人シリーズ最新刊です♪

シリーズものなので、夏目の娘が意識障害を患っているなどの基本情報は知っていた方が良いとは思いますが、そうでなくても楽しめる短編集だったと思います!

 

本書に収録されている作品はこちら

『黄昏』 母親の死亡後、その母の遺体を暮らし続けた娘の話

『生贄』 強姦された女性たちの話

『異邦人』 海外からの留学生たちの過酷な生活状況の話

『刑事の怒り』 意識障害の患者とその家族の話

 

どの話も、自分の実生活ではなくとも、ニュースで見聞きしたことのあるような設定だったので、すんなりと読めました。特に1話目の「遺体と共に生活をしていた」なんていうのは、近年よく報道される内容ですよね…(>_<)

ただ、設定は「見聞きしたことある」だけれど、本書の面白いところは「ではなぜそういう行動に出たのか?」という「動機」を探っていくところにありました!

結局は罪を犯している時点で、そこにどんな理由や動機があろうが「自己の正当化」というただの犯人の「ひとりよがり」なものになってしまうのだけれど、人の数だけそこには人生という物語があるので、そこの辿り着くまでの経緯は、他人の人生を垣間見ている様で興味深く読みました。2話目の強姦の話は読んでいて辛すぎましたが…(:_;)

 

本書は今までの作品よりも強く「生きる尊厳」を感じました。無駄な命などこの世にはないし、邪険にして良い人間などいないのだと。

ただの犯人捜しの警察小説ではなく、人が生きていく上で何を大切にしていくべきかもヒントをくれるこの夏目シリーズは本当に凄いなと思います。

 

是非是非読んでみてくださいね〜〜♪



  ├ 薬丸岳 -
近藤史恵 『インフルエンス』

*あらすじ*

大阪郊外の巨大団地で育った小学生の友梨(ゆり)はある時、かつての親友・里子(さとこ)が無邪気に語っていた言葉の意味に気付き、衝撃を受ける。胸に重いものを抱えたまま中学生になった友梨。憧れの存在だった真帆(まほ)と友達になれて喜んだのも束の間、暴漢に襲われそうになった真帆を助けようとして男をナイフで刺してしまう。だが、翌日、警察に逮捕されたのは何故か里子だった――
幼い頃のわずかな違和感が、次第に人生を侵食し、かたちを決めていく。深い孤独に陥らざるをえなかった女性が、二十年後に決断したこととは何だったのか?

 

 

*感想*

同じ団地で育ったという運命から、お互いを守りあう為に犯罪に手を染めてゆく女性3人の物語でした。

 

物語の序盤は、自宅が近いという理由だけで友達関係になれた小学生時代、そして見た目の垢抜け度や性格の派手さでグループ分けがされてゆく中学生時代という、残酷でリアルないわゆる「スクールカースト」も上手く盛り込まれていてグイグイ話に引き込まれました。

 

そのスクールカーストで考えれば、友人関係になることのなかったであろう友梨と里子なのに、14歳の時に友梨は親友の真帆を痴漢から守るために殺人を犯し友梨は逃亡、しかし警察に逮捕されたのは、その場にいなかった里子だったというところから、3人の切れない運命の糸が絡まり始め、胸を苦しめながら読み進めました。

 

特に30歳を越えてからの、友梨が真帆を助けるために行う殺人は、中高生時代の殺人とは違い、その罪の大きさや、その後の影響とかもわかっているだろうに決断するしかなくて、「借りはつくるものではないな…」とか「タダより高いものはない…」などと思いながら読みました。

こういう「逃れられない運命」、もしくはタイトルの和訳を使用するならば「影響。感化。勢力。威信」という物語だからこそ、もっともっと深い心情描写を読みたかったな〜〜(>_<) 262ページでは少なすぎてちょっと勿体無かったです。もっとそれぞれが殺人という切り札を使うしかなかった苦悩を読ませて欲しかったな。

 

何にしても、やはり近藤史恵さんの作品は面白い!ちょっと終盤物語がドライに感じた箇所もあったけれど(友梨と夏目の関係があっさり終わるところ)、文章が簡潔で美しいのでサラサラと読んでしまいました!

登場人物たちのドロドロ濃い運命を描いた長編群像劇を読むには時間が足りない方には、丁度良い長さと濃さの物語だと思うので、是非読んでみてくださいね〜〜♪

 



  ├ 近藤史恵 -
近藤史恵 『わたしの本の空白は』

 

 

*あらすじ*

気づいたら病院のベッドに横たわっていたわたし・三笠南。目は覚めたけれど、自分の名前も年齢も、家族のこともわからない。現実の生活環境にも、夫だという人にも違和感が拭えないまま、毎日が過ぎていく。何のために嘘をつかれているの?過去に絶望がないことだけを祈るなか、胸が痛くなるほどに好きだと思える人と出会う…。何も思い出せないのに、自分の心だけは真実だった。

 

 

*感想*

人間は忘却の生き物だからこそ、長い人生を生きていけるのだと思う。恥ずかしい失敗、腹が立つトラブル、悔しい結果など、全てを鮮明に覚えていたら身が持たないですからね(^_^;)

そして本書を読んだら、その「忘れたい過去」の中には「好きになるべき相手ではなかった人との恋愛」も入るのかも… と思いました。

 

本書の主人公は記憶喪失になってしまった三笠南という女性です。病院で目覚め、「夫」だと名乗る男性がやってきてもいまいちピンとこなくて、「好きという感情の記憶」すらも喪失してしまったのかと思っていたのに、夢に出てくる一人の美しい男性に心惹かれ、そして胸が締め付けられるように痛み、触れたい衝動に駆られてしまう… 

一体彼は誰なのか?実在する人なのか?一体なぜ南の記憶は無くなり、そして記憶は戻るのか?

という、南の苦悩を描いた物語でした。

 

↓ここからネタバレ↓

↓ここからネタバレ↓

↓ここからネタバレ↓

 

 

南と慎也の関係などに色々違和感があったのですが、結論は言われてみれば結構簡単というか、「ほほー!なるほど!」という納得できるものでスッキリしました。

その結論とは…

南は本当は慎也の弟である晴哉と交際していたのだが、南は晴哉に結婚詐欺行為をされてしまい、お金を奪われ、そして南が戸籍上入籍したのは晴哉とではなくて、慎也とだった(晴哉が自分のことを”慎也“だと名乗っていた)。

からだったのですね〜〜

 

このあらすじだけ読むと、ただの結婚詐欺物語なのですが、記憶のない南が晴哉に会いたくて胸を痛めたり、晴哉が深夜に南に会いに家の前まで来て、南がコートを羽織って飛び出すシーンなどが、とてもロマンティックで、気が付いたら没頭して読んでいました。

これが純粋に「好き」ってことなのですよね。

記憶がない分、南が晴哉に恋しているのは、晴哉の美しい外見もあるかもしれないけれど、地位や財力や性格すらも関係ないDNAレベルで惹かれてるということなのかと感じたのです。

しかしその後、徐々に南は記憶を取り戻し、そして晴哉は「好きになるべきではない相手」と認識し、距離を置くことを決めるのですよね…

その「純粋な恋愛」と「大人の分別のある恋愛」という振り幅に切なくなりました(´;ω;`)ウゥ…

 

幸せになるためには条件を選ばなければならない。

 

そんな大人の恋愛小説でした。

切なかったけれど面白かったー!でも本物の慎也が可哀想だったよ〜(´;ω;`)ウゥゥ

 



  ├ 近藤史恵 -
湊かなえ 『未来』

*あらすじ*

「こんにちは、章子。わたしは20年後のあなたです」ある日、突然届いた一通の手紙。
送り主は未来の自分だという……。

父親を亡くし、自分の世界に籠りがちな母親と2人で暮らす章子は、未来の章子からの手紙通り、悲しみを乗り越え、そして明るい未来が待っているのだろうか…

 

 

*感想*

私の周りには「湊さんの作品は、読後辛くなるので読めない」という人がいるのですが、今回も「間違いなく辛くなります!」と断言できる作品でした。

 

いじめ、自殺、他殺、性的虐待、売春強要、親の離婚、親の失踪、親の早死、DVなどなど… 不幸エピソードのフルコース過ぎて、逆に現実味が減ってしまっていたとすら思える、ドロドロした作品でしたので…。

『未来』というタイトルから、“明るい未来や希望”を思い描いて読み始めた人はきっとショックを受けると思います、ご注意下さい

 

物語は、主人公の章子(10歳)が父親を亡くし、そして学校生活でも上手くいっていない時に、20年後の章子(30歳)から「20年後のあなたは、むねをはって幸せだと言える人生を歩んでいます。がんばれ、章子!」という応援のお手紙をもらうところから始まります。

ただの応援手紙だと、誰かの悪戯なのかとも思ってしまうのですが、そこには章子自身ではないと知らないエピソードなども書かれていて、この手紙は本当に未来から届いたのではないかと思わされました!

そして、本当に未来から届いた手紙だと信じた10歳の章子が、30歳の章子へお返事を綴る形式で物語が進行していきます。つまり、湊さんの十八番の「独白形式」でね。

 

で、そこから10歳の章子の人生と、章子に関わる人々の人生がそれぞれ綴られていくのですが… もうそれが酷い、酷い、酷いのですよっ!!冒頭でも述べた通り、不幸エピのオンパレード

ここでは誰が具体的にどういう被害にあったのかは書きませんが、その不幸エピのオンパレードについては一言物申させてください!

 

よく自分の生み出した作品は”子供みたいもの“というような言葉を聞くことがあるけれど、湊さんは自分の生み出した登場人物たちをこんなに不幸にさせて辛くないのかな?例えば戦時中の小説とかで、登場人物たちが辛い思いをするのは「現実に起きてしまった歴史」として読者に伝えたいという著者の思いを感じることができるのだけれど、今回のような、ただただ登場人物たちがいじめられ、蹂躙され、絶望を感じさせられることにどんな意味があるのだろうか?と思いました。確かに現実にいじめや性的虐待などはあるでしょう、しかし本書では、複数の少年少女たちが同じような性的虐待を受けていたり、親を亡くしていたりする重複した設定で、ただただ物語をよりグロテスクにして、少年少女たちをより不幸に貶めるために与えた設定としか感じられず、私には気持ちの良くない小説だったのです。

 

本書で著者自身も書いているじゃないですか

 

言葉には人を慰める力がある。心を強くする力がある。勇気を与える力がある。癒し、励まし、愛を伝える事もできる。

だけど、口から出た言葉は目に見えない。すぐに消えてしまう。耳の奥に、頭の芯に、焼き付けておきたい言葉でさえも、時が過ぎれば曖昧な姿に変わり果ててしまう。

だからこそ、人は昔から、大切な事は書いて残す。言葉を形あるものにするために。永遠のものにするために。

P15.から抜粋)

 

そう書いているのにーーー!

何故湊さんは登場人物達をそんなに苦しめるの(;_:)

 

ううう… 章子の未来が気になってほぼ一気読みだったけれど、読んでいて辛く苦しく、そして私には納得のできない作品でした… 



  ├ 湊かなえ -
久坂部羊 『祝葬』

*あらすじ*

「もし、君が僕の葬式に来てくれるようなことになったら、そのときは僕を祝福してくれ」自分の死を暗示するような謎の言葉を遺し、37歳の若さで死んだ医師・土岐佑介。代々信州を地盤とする医師家系に生まれた佑介は、生前に不思議なことを語っていた。医師である自分たち一族には「早死にの呪い」がかけられているという―。簡単に死ねなくなる時代につきつけられる、私たちの物語。

 

*感想*

現役医師作家である著者:久坂部さんは近年、終末医療についての問題提起が多く(昨年読んだ『いつか、あなたも』『老乱』など)、本書もまた最期の迎え方について考えさせられる作品でした。

 

本書は5編からなる連作短編集で、主人公というか、軸となる登場人物は、信州で病院を経営する短命医師家系(土岐ファミリー)でした。

各話で、曾祖父から曾孫まで、どういう医療方針のもと医師として働き、どういうプライベートを過ごし、そして最期を迎えたのかが綴られていくのですが、時代の違いと個人の見解の相違から、それぞれ人物たちに濃厚な物語があり、とても面白かったです!!

 

私が一番ドキドキしながら読んだのは、2話目の『真令子』でした。この話は、今までの久坂部さんからは想像できないほどの「愛憎劇」で、久坂部さんの作家としての実力に驚ろかされました!

簡単にあらすじを紹介しますと、土岐伊織と妻の真令子、伊織の従姉(芳美)の三角関係がベースで、そこから真令子と伊織がそれぞれ不貞をはたらく… という物語でした。

このあらすじだけ読むと、全く医療が関係ないですね(笑)

しかし、その愛憎劇から伊織の真っ直ぐ(愚直)な考え方が読み取れ、しかも患者に対しても真っ直ぐ向き合おうとしてしまったばっかりに不幸を招いたりと物語が繋がるので、是非是非読んでみてください。

とにかく、医療が絡んでいない場面での心情描写も秀逸なので読み応えありますよ!

 

そして一通り土岐ファミリーの短命の運命について綴られたのち、最終章の舞台はかなり先の未来へと移ります。

それは現代以上に「死ねない世界」になっていて、ここでまたも「終末医療」について深く深く考えさせられました。

医療のおかげで、早すぎる死を免れた人がいるのは間違いない。しかし忌まわしい長寿を作り出しているのも事実なのでしょう。

では人は一体何歳で死ぬべきなのだろうか。

自身が望む最期を迎えるにはどうしたら良いのか…

 

人の一生の最期については、哲学的、倫理的、感情的に色々複雑な意見があるでしょう。でも本書を読むと、自分がどういう最期を迎えたいのかなんとなく見えてくると思います。

 

少子高齢化社会と、自分の老後に医療を選択するためにも、本書は読んでおくと良いと思います!

もし最期について興味なくても、愛憎劇がチラホラ絡んでくるので、昼トラ的内容としても楽しめるとも思いますので、是非読んでみてくださいね〜〜♪

 

 



  ├ 久坂部羊 -
1/79PAGES >>
S M T W T F S
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   
<< October 2018 >>
Category
Profile
Archives
Comment
Search
Mobile
qrcode
Sponsored Links